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論点

新型コロナ 「石油時代」は終わるのか

 新型コロナ禍で原油市場が歴史的混乱期を迎えている。4月には米国の先物市場でマイナスをつける異常事態に。やや持ち直したとはいえ、価格形成を支配してきた石油輸出国機構(OPEC)、ロシア、米国の思惑が入り乱れ先行きは不透明さを増す。世界経済の安定と不可分の関係にある石油。新たな秩序は見いだせるのか。

 新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に広がり、人類最大の危機となった。最大の石油消費国である米国が最大の感染国になり、人の移動制限で航空機や自動車の燃料需要は激減。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界需要の3分の1に相当する日量2900万バレルの石油消費が消滅した計算だ。コロナ危機は人類を石油時代の終わりへと導いているのかもしれない。

 供給サイドでは、2017年から続いていたサウジアラビアとロシアを中心とする減産枠組み「OPECプラス」が崩壊した。減産もせずにシェールオイルの「漁夫の利」を得続ける米国への不満を強めるロシアのプーチン大統領がサウジの減産強化案を拒否したためだ。腹を立てたサウジは逆に増産に踏み切り、価格戦争を仕掛けた。

 もともとロシアが17年にサウジに同調したのは、中東で存在感を高めたいプーチン氏の思惑があったため。国営石油大手ロスネフチは減産に反対していたが、それを押し切ったのもプーチン氏だった。中東関与の目的を果たしたロシアにとって、今回の狙いは対露制裁を続ける米国を減産に巻き込むこと。そのため、米国が参加しない「OPECプラス」に「ノー」を突き付けたのだ。

 サウジとロシアによる価格戦争を巡っては、ムハンマド皇太子がプーチン氏が電話に出ないことに激怒し、シェア拡大に走ったという話もある。財政均衡を下回る原油安は双方に痛手だ。メンツも絡んで引くに引けずに困っていた時、仲介に動いたのがトランプ米大統領だった。原油安でシェール企業が倒産し、リーマン・ショックのような危機の再来を恐れたのだろう。

 OPECプラスが4月に合意した減産幅は「970万バレル」だったが、米国やカナダ、メキシコなどの生産減少を予想し、主要20カ国・地域(G20)の会合で「1500万バレル」規模の減産になるというメッセージを出した。中国やインドなど可能な国は戦略備蓄を積み増して協力することも確認し、コロナ危機と石油危機のダブルの危機に協調していく姿勢を打ち出した。IEAのビロル事務局長が合意に向けて努力したことも評価できる。とはいえ、原油価格は不安定な状況が続く。中国経済は再開しつつあるが、世界経済全体が回復しなければ石油需要は戻らない。4月20日には米国産標準油種(WTI)の5月先物価格が史上初のマイナスをつけ、市場を驚かせた。生産しても置き場がない前代未聞の状況だ。

 石油は米国、ロシア、サウジの三つどもえの地政学的な商品だ。輸入国である日本としては、できるだけ「脱石油」を進め、中東依存度を下げるのが賢いやり方だ。石油メジャーも既に天然ガス事業にシフトしている。英石油大手BPや英オランダのロイヤル・ダッチ・シェルなどは「我々はもはや石油企業ではない。ガス企業だ」と言うほどで、風力や太陽光を使った再生可能エネルギー市場にも進出しようとしている。

 コロナ危機の下、テレワークが定着すると、省電力化が加速する。二酸化炭素も減って都市の空もきれいになったようだ。G20が4月に開いたエネルギー相会合は、コロナ不況からの脱出をクリーンエネルギー革命で進めるということを確認した。「グリーン景気刺激策」でコロナ危機を乗り越えようというものだ。

 「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」。サウジのヤマニ元石油相はこんな言葉を残している。石油時代も…

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