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記者の目

ひろしまトリエンナーレ中止 多様性封じた観光偏重=清水有香(大阪学芸部)

2019年10~12月に開かれたひろしまトリエンナーレのプレイベント。昭和天皇の肖像などをコラージュした大浦信行さんの版画「遠近を抱えて」も展示された=広島県尾道市百島町のアートベース百島で、清水有香撮影

 「国際的な芸術祭」を掲げ、広島県などが今秋初開催を予定していた「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」(ひろトリ)が4月、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に中止となった。展示内容を原則全会一致で選定する県の方針に美術関係者が反発するなど、混乱の末の幕切れだった。一連の過程を取材して感じたのは、表現の多様性を軽んじた県の観光振興ありきの姿勢だ。芸術は「美しく楽しい」ものだけではない。時には社会の問題をえぐるような刺激を伴う。そうした幅広い表現に触れる機会を提供することこそ、公共のための芸術祭の重要な役割だと私は思う。

 ひろトリは県などでつくる実行委が主催し、事務局を観光課に置くなど観光振興を強く打ち出していた。国内では2000年以降、「越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」など里山や離島が舞台の芸術祭が多くの来場者を集め、町おこしの面が注目されるようになった。三原・尾道・福山市を会場としたひろトリもその流れをくむ。一方、基本計画によれば「県東部の地域性と近代化の痕跡を、先鋭的な現代アートが持つメッセージ性により顕在化」する狙いがあった。

 だが「現代アートの先鋭性」は思わぬ事態を招いた。19年10~12月に尾道市で開かれたプレイベント。同年の「あいちトリエンナーレ」(あいトリ)の企画展「表現の不自由展・その後」に出展され、昭和天皇の肖像を巡り波紋を広げた作品が展示されると、批判が殺到した。県によると、観光課への苦情電話が相次ぎ、ひろトリの広報ができないほど職員が疲弊したという。

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