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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「クレタ人はみなうそつきだ」とクレタ人が言った…

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 「クレタ人はみなうそつきだ」とクレタ人が言った――さて、この言葉はうそかまことか。聞いたことがおありだろう、「クレタ人のパラドックス(逆説)」だ。このクレタ人、エピメニデスという名前である▲彼はギリシャ7賢人の一人に数えられる実在の詩人・予言者で、死んだのは157歳だとか300歳だとかいわれる。そればかりか子ども時代に洞窟に入り込み、57年もの間眠っていたという話もある。文字通りの伝説的人物である▲眠りから目覚めると、彼は霊感や予知力を身につけていたのだとか。飲まず食わずの長い眠りといえばクマなどの冬眠を思い起こすが、さて、聞こえてきたのは人間の脳内にも冬眠のスイッチがあるかもしれないとのニュースである▲筑波大などのチームがマウスの脳神経の一部を薬剤で刺激して冬眠状態に導いたのである。マウスの体温は通常の37度から20度台前半に低下、心拍数も4分の1に減り、休眠状態になった。薬効が切れると、元通りに回復したという▲チームは刺激した神経細胞を「Q神経」と名づけたが、ヒトにもこれに相当する神経があるそうだ。もしヒトも人工冬眠に導ければ、脳卒中(のうそっちゅう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)の際の延命や、臓器の保存に応用できる。今後はサルなどで実験を進めるそうだ▲こう聞けば宇宙旅行の長期冬眠や、たとえば57年後へのワープなど、SF的な想像がつい先走ってしまう。長い眠りのスイッチをうまく用いるには相応の賢慮が要るのは、クレタの賢人に聞くまでもない。

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