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鴻巣友季子・評 『二〇世紀「英国」小説の展開』=高橋和久、丹治愛・編著

『二〇世紀「英国」小説の展開』

 (松柏社・5280円)

 本書目次には、ジェイムズ(垂井泰子)、コンラッド(丹治愛)、ウルフ(片山亜紀)からイシグロ(武田将明)まで十八の作品論が並ぶ。本稿では、「失敗」と「未遂」というキーワードを頼りに、本論集の今日的な独創性を浮彫りにできたらと思う。

 河野真太郎のオーウェル『一九八四年』論は、氏の先行書『<田舎と都会>の系譜学』に連なる論考だ。「愛国心」と「全体主義的なナショナリズム」を区別していたオーウェルの同作において、役人ウィンストンは「歩く」という文化を「奪用しかえす」ことで後者に対抗したという。

 自由なすずろ歩き、それは二十世紀前半の英国で、上層中産階級以上に特権化された知的文化だった。オーウェルの『葉蘭を窓辺に飾れ』のアイロニーは、主人公の「ゴードンが街や田舎を歩く、正確には歩くのに失敗する場面にいかんなく発揮される」。『一九八四年』ではそれが束(つか)の間とはいえ可能になるのはなぜか? それは、下層中産階級ではなく、労働者階級を対置させたからだと、河野氏は説く。ウィンストンの見かけた…

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