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白井聡・評 『アンビルトの終わり ザハ・ハディドと新国立競技場』=飯島洋一・著

『アンビルトの終わり ザハ・ハディドと新国立競技場』

 (青土社・6820円)

 今頃、日本列島は「オリンピック一色」となっていたはずだった。コロナ危機終息の展望は見えず、来年夏に東京五輪が行われるだろうと確信するのは難しくなっている。

 ところで「アンビルト」とは、建たない、あるいはそもそも建つことが想定されていない建築を指す。2020東京五輪はまるで「アンビルト」にとり憑(つ)かれたかのようだ。発端は、新国立競技場の設計コンペで、「アンビルトの女王」ザハ・ハディドの案が当選したところにあったかに見える。ハディドのプランは、観(み)る者の度肝を抜く壮大さによって当選の座を仕留めるが、その実現可能性(技術的ならびに財政的)をめぐって強い批判を浴び、計画は撤回、コンペはやり直しとなる。この過程と並行して、エンブレムの盗作疑惑問題と再選定、さらには招致過程における買収疑惑という不名誉な事件がたて続けに起こった。ハディドは自らのプランの後を追うかのように急逝し、ついには新型コロナがとどめを刺す。ハディドの新国立のみならず、東京五輪そのものが「アンビルト」に終わる方へと向かいつつある。

 本年5月刊の本書が、こうした結末をあらかじめ見抜いて書かれたわけではない。にもかかわらず、1000頁(ページ)近い大著である本書は、2020東京が辿(たど)りつつある奇妙な運命を確かに言い当ててもいる。

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