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犬が西向きゃ

国際報道に優れたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した、高尾具成編集委員のコラム。

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犬が西向きゃ

魂を故郷へ帰した勇気=高尾具成

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 米中西部ミネソタ州ミネアポリスの路上で5月25日、黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官に膝で首を押さえつけられて死亡した。46歳。さして抵抗もせず、後ろ手に手錠を掛けられ、地面にうつぶせにされた後、「息ができない」と訴えながらだった。

 翌26日には地元ミネアポリスで抗議デモが起こり、その後、全米を越え、世界へと広がっていく。端緒となった記録は通行人だった17歳の黒人女性、ダルネラ・フレジアーさんによって撮影された。いとこを連れて買い物に出ていた時、事態に遭遇し、とっさにスマートフォンを取り出したという。フロイド氏が首を圧迫され続けた8分46秒を含む10分6秒の映像を撮り、フェイスブックにあげた。「ここで何もしなければ、今起きていることを誰も信じないわ」。米デーリー・ニューズ紙は弁護士に語った彼女の話を紹介している。

 10分間の「長回し」は強い使命感がなければ難しい作業だったはずだ。米メディアは、少しでもカメラを背けたり、フロイド氏から警官が膝をどける瞬間を見逃していたら「フェイク扱い」をされていた可能性に触れ、フレジアーさんがSNS上で誹謗(ひぼう)中傷を受け、苦しんでいることも伝えている。

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