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政権内二分「緊急事態宣言」 政府、自治体、専門家はどう動いたのか 準備から全面解除までの舞台裏

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新型コロナウイルスの感染拡大への対応などについて記者会見する安倍晋三首相=首相官邸で2020年3月28日午後6時16分、川田雅浩撮影
新型コロナウイルスの感染拡大への対応などについて記者会見する安倍晋三首相=首相官邸で2020年3月28日午後6時16分、川田雅浩撮影

 「早くした方がいいかもしれないね」。安倍晋三首相は3月28日朝、新型コロナウイルス対策を担当する西村康稔経済再生担当相に首相公邸から電話をかけ、緊急事態宣言の発令に傾く胸中をのぞかせた。全国の新規感染者数は25日以降、急速に拡大し、27日に初めて100人を超えていた。ただ、首相は28日夕の記者会見で「今の段階では緊急事態宣言(を出す状況)ではないが、まさにギリギリ持ちこたえている」と慎重に言葉を選んだ。

 同じ28日、東京大医科学研究所に複数の専門家が集まった。4月1日に開催される政府専門家会議で示す見解を巡る意見交換が目的だったが、緊急事態宣言の当否が話題の中心となった。「大きな副反応が伴う。エイヤー、と出すべきではない」という慎重意見の一方で、「患者が押し寄せて入院させられなくなる」などとして、一刻も早く宣言を出すべきだと唱える専門家が大勢を占めた。

 政権内は緊急事態宣言を出すかどうかを巡り、慎重論と積極論に割れていた。首相が2012年末の第2次内閣発足から7年余りにわたる長期政権を築いた原動力は経済。宣言は感染拡大を抑止する「伝家の宝刀」(西村氏)になり得る半面、経済を失速させる負の側面を併せ持つ。菅義偉官房長官は「負の側面なんてもんじゃない。経済がもっと止まって大変なことになっちまう」と周囲に漏らしていた。

 一方、感染者増加による医療崩壊を懸念する西村氏は「早く宣言すべきです」と首相に早期決断を促していた。西村氏は27日、専門家に新型コロナ対策の意見を聞く諮問委員会で、対策強化を求める意見に押される形で「緊急事態宣言はもしかしたら明日、あさってかもしれない」と発言する。

 政府内の意見が二分される状況が続く中、首相が最終決断するにはなお時間を要した。自民党総裁任期の満了が来年9月に迫り、求心力低下が進む首相にとって、政権運営を大きく左右しかねない決断を下すのは容易ではなかった。

 27日以降、国会周辺では「4月1日にも緊急事態宣言が出される」との情報が飛び交い、インターネット上にも飛び火した。政権幹部にも問い合わせのメールが殺到し、菅氏は「誰が言っているんでしょうね」と対応に追われた。首相は3月30日の自民党役員会で「こうしたデマやフェイクニュースに気をつけなくてはいけない」と打ち消す。

 緊急事態宣言を巡って緊張する政府内の状況を閣僚の一人は「今は綱引きの真ん中が動いていない状態だ」と表現した。

 宣言が発令されたのは4月7日。政府専門家会議は5月25日の全面解除の後、感染のピークは宣言6日前の4月1日ごろだったとの分析を示した。専門家会議メンバーの舘田一博・日本感染症学会理事長は「宣言をもう1週間早く出していれば流行をもう少し抑えられたかもしれない。ただ、あの時点では難しい判断だったと思う」と振り返った。

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 新型コロナウイルスの感染拡大は前例のない対応を迫り続けている。人間は今後も新たな感染症との闘いを避けられない。私たちは何を誤り、何を学んだのか。時々の政策判断やタイミングは適切だったのか。未来への備えのために、これ…

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