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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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骨董商がうっかり偽物をつかまされることを…

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 骨董(こっとう)商がうっかり偽物をつかまされることを「しょいこみ」というそうだ。さて、しょいこんだものは、どうやって肩から下ろすのか。一方、本物でも傷を見落として買うこともあり、これを「粗見(そけん)」という▲文字通り、粗雑な下見のせいということで、しょいこみともども目利(めき)きのプロとしては情けない話だろう。さて、こちらは総額4500億円超、陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」なる珍品の「粗見」である▲弾道ミサイル防衛のために秋田県と山口県に配備予定の陸上イージス計画の唐突な「停止」発表だった。河野太郎(こうのたろう)防衛相が、迎撃ミサイルのブースター落下の安全性を確保できず、その改修も事実上は無理だと明らかにしたのである▲忘れもしないグーグルアースを誤用した立地理由の説明や、住民説明会での担当官の居眠りが世の失笑を買ったこの計画だった。今度はかねて指摘されていたブースター落下の危険が、やっぱりあったというのだから間(ま)が抜けている▲思えば中露が開発中の極超音速兵器で、完成時には時代遅れになるといわれた陸上イージスだ。技術的不備は計画停止の表向きの理由ではないかと、勘ぐる向きも出てこよう。この先、ミサイル防衛の抜本的な再検討は避けられまい▲陸上イージス導入の必要性を率先して訴えてきた首相には、その「粗見」が問われることになった。ちなみに骨董の世界では、品物の鑑定を相手まかせで売り買いする人を「相手目利き」というそうである。

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