なぜベトナム人女性たちは声を上げなかったのか 技能実習生の人権侵害、法施行後も

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事件後に所持が認められるようになったスマートフォンを手に取材に応じるベトナム人技能実習生=2020年4月11日午後2時45分、中里顕撮影(本人の希望でモノクロにしています)
事件後に所持が認められるようになったスマートフォンを手に取材に応じるベトナム人技能実習生=2020年4月11日午後2時45分、中里顕撮影(本人の希望でモノクロにしています)

 2020年2~3月に外国人技能実習生と受け入れ企業の間に入る福岡市東区の監理団体の代表理事らが逮捕される事件が起きた。実習生の人権を守るため17年11月に施行された技能実習適正化法の禁止行為規定を福岡県警が適用した全国初のケース。取材に応じた被害者のベトナム人女性たちは、スマートフォンを没収されるなど私生活の自由を奪われた日々を打ち明けた。なぜ事件化するまで彼女たちは声を上げなかったのか。その背景を追った。

 「ホンダ、スズキ、ヤマハ。日本語を勉強して日本の会社に入りたい」。九州のコンビニ弁当工場で働く複数の若いベトナム人女性の実習生たちは事件後の4月、帰国したら高給の日系企業に就職したいと目を輝かせた。ただし、その笑顔と裏腹に実習生活は警察が介入する事態になるまで厳しい監視下に置かれた。

 実習生たちがそろって来日したのは適正化法施行と同時期の17年11月。翌月には監理団体の通訳を務める「指導役」のベトナム人女性から「言うことを聞かないとベトナムに帰す」などと告げられ、スマートフォンを没収された。平屋の民家の「寮」で13人の共同生活。自由な外出時間は休日の2時間だけとされ、外部のベトナム人との接触も禁止された。指導役の女性が定期的に訪れ、部屋が散らかっているとして罰金名目で現金を要求することもあった。トイレは故障して使えなかった。

 人権侵害とも取れるこうした境遇は、19年2月ごろに一部の実習生が技能実習制度の監督機関「外国人技能実習機構」に相談して発覚するまで1年以上続いた。機構は同4月から調査に乗り出し、8月に県警に通報。県警はスマホの没収が適正化法違反容疑に当たるとして、20年2~3月、指導役の女性や代表理事ら計3人を逮捕した。福岡地検は「諸事情を考慮した」として3人を不起訴にしたが、問題発覚後、実習生たちは別の寮に引っ越し、自由な外出やスマホの所持も認められるようになった。

 実習生たちは入国時に「技能実習生手帳」を受け取っており、監理団体から不当な扱いを受けた場合は機構に母国語で相談できると知っていた。なぜ、すぐに相談しなかったのか。

 その理由について、この監理団体に勤務経験がある関係者は…

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