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常夏通信

その48 74年目の東京大空襲(34) どこまで格差広がれば違憲? 原告に新たに生まれた闇 

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空襲被災地で運ばれる焼死体=東京で1945年2月撮影
空襲被災地で運ばれる焼死体=東京で1945年2月撮影

 第二次世界大戦下、大阪などで空襲の被害に遭った人たちが国に謝罪と補償を求めた訴訟の控訴審判決は2013年1月16日、大阪高裁で下された。またもや原告敗訴だった。空襲被害者による国賠訴訟の敗訴、という結果は他の訴訟、たとえば名古屋大空襲の被害者が国に賠償を求めた訴訟と同じである。しかし前回見たように、この大阪高裁の判決には注目すべき点があった。

 名古屋大空襲国賠訴訟は1987年、最高裁が原告敗訴の判決を下した。戦争被害受忍論をたてに、原告である民間人戦災者を救済する立法をしなくても、それが違憲となる「余地はない」としたものだ。

 一方、大阪高裁は戦争被害に対する補償を受けられた者と受けられなかった者との間に差異があることを認め、「憲法14条1項の定める平等原則との関係で、全く問題を生じさせる余地がないと即断することはできない」とした。

 さらに「(その差異が)憲法的秩序の維持という観点から到底看過することができないと認められる程度の著しい不公平状態を生じさせ、かつ、それが相当期間継続して、このような不公平等状態を是正する何らかの措置を講じないことが、複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮しても、その許される限度を超えると判断される極めて例外的な場合に、初めて憲法に違反する」とした。

 大阪高裁は、戦後補償裁判の判決文でおなじみの「立法裁量論」、すなわち「どんな法律を作るか、あるいは作らないかの判断については立法府に広範な権限が保障されている」という判断をまたもや採用しつつも、同じ戦争被害者でありながら、国が戦後補償をする人としない人とに分けてきた政策が、「憲法に違反する」可能性があることを示したのだ。

 大阪空襲訴訟で原告と原告弁護団が得た、大きな成果である。「戦争では国民全体が何らかの被害に遭った。だからみんなで我慢しなければならない」という「戦争被害受忍論」=一億総懺悔(ざんげ)の法理の暗闇を切り裂く光となり得るものだ。

どこまで差別が広がれば、違憲になるのか…

 ただ、原告側が新たに道を切り開いた先には、別の暗闇があった。

 憲法の秩序破壊につながるような、著しい不公平がある。かつ、それが長期間継続している。国会の裁量権を加味しても、不平等状態が許される限度を超えている。そうなると「違憲」である。大阪高裁は、そう宣言した。その一方で、原告の訴えを退けた。

 大阪高裁の判決があった2013年の時点で、軍人や軍属らと原告のような民間人空襲被害者の間には著しい差があった。前者には補償や援護などで累計50兆円以上、後者には実質的にゼロ円。同じ戦争被害者に対するこの差別が1952年以来61年も続いていた。つまり大阪高裁は、こうした差別を憲法上許される限度を超えてはいないもの、と判断したのだ。

 一年中「8月ジャーナリズム」=戦争報道をしている常夏記者こと私が原告だったら、裁判長に聞きたいところだ。

 「同じ戦争被害者、元軍人・軍属や遺族と民間人で、補償の格差がもっと広がらないと『違憲』にはならないんですか。これから先、どれくらい格差が広がったら『違憲』になるんですか」と。

東京、大阪空襲訴…

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