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収入減、失職…移民を追い込む新型コロナ 佐藤美央・国際移住機関駐日代表

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国際移住機関(IOM)の佐藤美央駐日代表=2020年5月26日午後3時37分、和田浩明撮影
国際移住機関(IOM)の佐藤美央駐日代表=2020年5月26日午後3時37分、和田浩明撮影

 世界的流行が続く新型コロナウイルス感染症は、滞在国で弱い立場に置かれている移民らをさらに厳しい状況に追い込んでいる。収入減や失職、医療へのアクセス制限に直面し、母国への帰国もままならない状況だ。移民の保護に取り組む国連の国際移住機関(IOM)駐日事務所の佐藤美央代表に、各国の現状を聞いた。【統合デジタル取材センター/和田浩明】

「移民の本国送金、2割減」世銀予測

 ――コロナ禍は移民にも深刻な打撃を与えているようです。

 ◆世界銀行は4月下旬、各国の移民が母国に送金する額が2020年には前年より2割減少すると予測しています。滞在国で失職して生活がままならなくなっただけでなく、移民の送金で経済が成り立つ国や社会へのダメージも非常に大きいと見ています。

 目の前の感染拡大防止で言えば、難民や避難民が集まっているキャンプなどは医療資源が不足しており、非常に難しい状況です。シリアやイエメン、リビアなどの紛争地や、感染が急激に拡大したブラジルの都市スラムなど、人々が長時間密集して暮らさざるを得ない「3密」環境を注視しています。

 IOMは、ほとんどの国や国連機関とパートナーシップを持っています。このため、国境の両サイドから支援が可能です。移民などには新型コロナに関する情報が伝わりにくく、情報の正確性にも問題があります。このため、病気や予防方法を分かりやすく説明したビラを配布したり、水とせっけんがある手洗い場所を検問所付近に設置したりするといった活動を、イランとアフガニスタンの国境などで行っています。

 約1万4000人いるIOM職員のうち、約1000人は医療関係事業に携わっています。パキスタンやケニアでは、IOMの医師が移民向け感染症対策の助言を、世界保健機関(WHO)の指針に沿って、地元当局に行っています。

一時停止状態になったIOMの活動

 ――IOMの活動への影響は。

 ◆多くあります。職員の任務地への移動や、移民を第三国に移動させたり自国に帰還させたりするオペレーションは、国境封鎖や飛行機の減便などで大きな影響を受けました。特に3、4月は、人道的に必要だったり人命に関わったりするケースを除き、ほぼ停止しました。

 その後、限定的ながら移動が可能になり、感染拡大を防ぎながら移動手段をどう確保していくかという段階になっています。

 例えば、オーストリアにいるブルガリアやルーマニアなどからの移民が帰国できるよう、中間経路にあるハンガリーは夜間から早朝に限定して移動路を設定しました。英国やイタリアなどは、以前から来ていた季節労働者が期間限定で滞在できるような措置を取ったりしています。

 今もさまざまな制限は残っていますが、その中で皆が生きていけるようにどうやって経済を回していくか、という試みが行われています。

 すでに移動の準備段階に入っていた難民や難民の家族が、IOMの調整によって、米国に5月に受け入れられた事例も少ないながらあります。

移民にも医療アクセス必要

 ――シンガポールでは移民労働者にも感染が広がりました。「外」のものへの反発をどう見ますか。

 ◆日本周辺のアジア地域だけを見ても、差別が起こりかねない状況だと懸念して…

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