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第94回センバツ高校野球

2022年に開催される第94回選抜高校野球大会の特集サイトです。

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悔しさも人生のバネに 高校球児ら、夏の舞台へくじけず全力投球 香川

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センバツ交流試合の決定を受け、西村太監督(中央)と決意を新たにする尽誠学園の選手たち=香川県善通寺市で2020年6月10日午後4時36分、潟見雄大撮影
センバツ交流試合の決定を受け、西村太監督(中央)と決意を新たにする尽誠学園の選手たち=香川県善通寺市で2020年6月10日午後4時36分、潟見雄大撮影

 新型コロナウイルスの影響で、戦後初めて夏の甲子園が中止となり、全国で代替大会の開催が次々と発表されている。一方、中止となったセンバツの代表校を招待する「センバツ交流試合」も8月に甲子園で開かれることになった。前例のない夏にどのような決意で臨むのか、香川県内の球児たちを取材した。【潟見雄大】

長尾健司監督(右)の話を聞く高松商の選手たち=高松市で2020年5月25日午後1時17分、潟見雄大撮影 拡大
長尾健司監督(右)の話を聞く高松商の選手たち=高松市で2020年5月25日午後1時17分、潟見雄大撮影

 「センバツがなくなり、夏の甲子園もなくなり、本当につらいことばかりだった。それでもここまで頑張ってきた選手たちは本当に偉い」。センバツ交流試合への出場が決まった6月10日、尽誠学園の西村太監督は選手たちの姿に目を細めた。一度つかんだ夢舞台の切符がなくなりながらも、選手たちは気持ちを切らさず練習に取り組んできたからだ。

 西村監督は日ごろから「お世話になった親や地域の人、先生たちに恩返しをしよう」と指導している。自分のためだけでなく、誰かのために頑張ることは今後の人生に生かせると考えるからだ。センバツが中止となった後も、選手たちは周囲に活躍する姿を見せようと、夏の甲子園、代替大会と次々に新しい目標を定め、練習に励んできた。

 井脇将誠選手(3年)は「代替大会で優勝し、他校の選手の分まで甲子園で戦いたい」と、センバツに臨んだ時とは違う思いを抱いている。尽誠学園の選手たちは多くの人たちの思いを背負って、代替大会や甲子園でこれまでの努力の成果を思う存分発揮してくれるだろう。

「心から楽しむ高校野球」を再確認

 2019年に春夏連続で甲子園に出場した高松商の選手たちの思いはひときわ強い。「小中学校の時からの目標で、甲子園に行くために高松商に入った。甲子園は自分にとって全てだった」。長尾和真主将(同)は今夏の甲子園の中止が決まった時の気持ちをこう振り返り、悔しさをにじませる。

笑顔で練習方法について話し合う飯山の選手たち=香川県丸亀市で2020年6月1日午後4時55分、潟見雄大撮影
笑顔で練習方法について話し合う飯山の選手たち=香川県丸亀市で2020年6月1日午後4時55分、潟見雄大撮影

 長尾主将は1年秋の県大会でベンチ入り。しかし翌春のセンバツ、夏の甲子園ではメンバーから外れ、選手として甲子園の土を踏んだことがない。同級生が大舞台で活躍する姿を見て、思いは一段と強くなった。また、2年生の時に春夏の甲子園を経験した篠原一球選手(同)も「絶対に甲子園へ帰ってくる」と誓い、土は持ち帰らなかった。悔しい思いは皆同じだ。

 また、強豪の高松商では大学や社会人で野球を続ける選手も多く、谷口聖弥選手(同)もその一人。進学先はまだ決まっておらず「自分のアピールもしなければいけない」と心境は複雑だ。練習中に自分のプレーの動画を撮影してもらい、大学などの野球部へアピールしていくという。

 長尾健司監督は「代替大会は甲子園につながらないからこそ、野球本来の楽しさを再確認できるのではないか」と期待し、「心から勝負を楽しもう」と選手たちに声をかける。甲子園を目標とするあまり、投げすぎによる故障など「勝利至上主義」が問題視されるが、代替大会は競技や勝負を楽しむスポーツとしての高校野球の魅力を見つめ直すきっかけになるだろう。

代替大会優勝=甲子園切符と同じ価値

 部員数の少ない飯山は19年秋の県大会を坂出工との合同チームで出場。中止になった今春の県大会も善通寺第一と合同チームを組む予定だった。現在部員は8人で、グラウンドも他の部活動と併用している。

 冨山瑛祐主将(同)にとって甲子園は小学生の頃からの憧れの舞台。しかし、チームの目標は現実的な「公式戦での1勝」だ。冨山主将は「甲子園を目指せることが幸せ。正直行くのは難しいが、可能性が完全になくなってしまうのは悲しい」と語る。

 また、進学校の高松では代替大会の開催が決まると、石田茂登監督が「参加せず、引退したい人は申し出てほしい」と選手たちに伝えた。他競技の全国大会が相次いで中止となり、引退を決めて受験勉強に切り替えている3年生が多いからだ。

 坂上晶亮主将(同)も獣医師を目標に北海道大への進学を希望しているが「野球を中途半端にやめたら、勉強も中途半端になる」と出場を決意。森涼馬選手(同)も「代替大会で優勝すれば甲子園に行くことと同じ価値」と前向きに捉え、3年生の9人全員が代替大会への出場を決めた。

 各校の選手たちは、変えることができない新型コロナウイルスの状況下で、夏の甲子園の中止を冷静に受け止め、今やるべきことを理解しながら、強い気持ちで代替大会へ臨む。前例のない夏を戦う球児たちの活躍に期待したい。

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