やまゆり園の虐待調査、コロナに乗じて闇に? 神奈川県の中止宣言に疑問の声
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新型コロナウイルス禍が続く中、障害者施設の虐待調査がうやむやにされようとしている。4年前に大量殺傷の舞台となり、昨年秋に新たに虐待の疑いが浮上した神奈川県立「津久井やまゆり園」(相模原市)。県が5月18日に突然、虐待に関する検証の中止を表明し、関係者に疑問の声が広がっている。植松聖死刑囚(30)の裁判の判決では、植松死刑囚が「重度障害者は不要な存在」と考えることにつながった背景として、職員による入所者への不適切なふるまいなどがあったと指摘。事件の教訓を福祉の現場で生かすためにも、実態解明が求められている。【上東麻子/統合デジタル取材センター】
県「中間報告で検証終了」 理由明かさず
津久井やまゆり園は、県が社会福祉法人かながわ共同会に運営を委託している。事件後、利用者は横浜市港南区芹が谷にある仮園舎を中心に複数の施設などに分かれて暮らしている。
ところが、昨年秋、入所者に対して不適切な支援が行われていたと情報が寄せられたことから、県が今年1月、第三者の有識者による検証委員会(委員長・佐藤彰一国学院大学教授)を設置。3人の委員が園の個人記録や会議録などを精査し、5月14日、中間報告書を県に提出した。報告書は、要件を満たさない身体拘束や長時間の居室施錠などの実態を挙げ、長期にわたる「虐待」の疑いを指摘。県に対しても「設置者としての役割意識が不十分」と改善を求めていた。3月議会では、検証委員会を広げた形で部会を立ち上げ、対象を県立施設全体に広げることになっていた。
ところが5月18日の県議会厚生常任委員会で、県側が「津久井やまゆり園の検証は中間報告をもって終了」「最終報告は作成しない」と説明。検証委員には事前にこの方針は伝えられておらず、佐藤委員長は「新型コロナウイルスの影響で延期になっていた園職員のヒアリングを実施するつもりだったので驚いた。県の意図が分からない」と戸惑いを見せる。
記者が鳥井健二・利用者支援検証担当課長に「検証中止」の理由を尋ねると、しばらく沈黙した後、「……議会…
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