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「おやときどきこども」 対話通じ現代の家族考える 福岡市の学習塾経営・鳥羽さんが刊行

6月下旬刊行の『おやときどきこども』

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 6月下旬にナナロク社(東京都)から刊行される『おやときどきこども』(鳥羽和久著、1760円)は、福岡市中央区で学習塾を営む著者が、約20年にわたり、幾多の親子と対話を続ける中で生まれた。本書には現役の塾生から卒業生まで多くの子どもたちとのやりとりが収められている。

 親や大人が提示する「将来」や「現実」の虚構を見抜き「大人はデフォルトで絶望のくせに、子どもに希望を持てとかほんとダサいし」と鋭く言い放つ高校生▽「空気を読まないから」と「サイコパス」とあだ名され、「共感」に潜む差別を感じ取る大学生▽親から離れることでこれまで受けてきた心理的虐待に気づき、迷いながらも再生を試みる卒業生――など、現代の親と子のリアルな姿が浮かび上がる。

 このほか、いじめや学習障害、リストカット、「ゲーム的人格」を持つ新世代の子どもたち、孤独など、さまざまな問題や現象について取り上げている。これらに対する鳥羽さんの実践に基づいた深い考察は、本書の読みどころの一つだ。時に哲学や精神看護学、文学などを援用しながら、親子の葛藤の背後にある親の不安や矛盾を解きほぐす。これは親子だけではなく、今を生きる全ての人が、自分を見つめ、大切な人と向き合うための指針となる。

 鳥羽さんは1976年、福岡県生まれ。大学院在学中に学習塾を始め、現在は小中高校生の教室のほか、単位制高校も併設し、約160人を教えている。さらに書店「とらきつね」を運営、作家やアーティストらの講演会やライブなども開催している。2018年には、さまざまな親子の葛藤を描いた『親子の手帖』(鳥影社)を出版した。刊行後、本を読んだ卒業生から、これまで語れなかった経験や思いを打ち明けられることが増えたという。今回の新著は、塾生とともに、そんな子どもたちが主人公だ。

鳥羽和久さん

 「あなたが選んだのだから最後まで責任を持って頑張りなさい」。親のそんな言い方に鳥羽さんは疑問を呈する。意志を持った人間に責任を課すのは一見、正しいように見えるが「実はとても危うい考え方」だと主張する。それは、意志さえ持っていなければ責任を回避できるとの論理を可能にするからだ。冒頭の言葉で責められ続けた子どもたちは親の前で目標や意志を口にしなくなる。そして自分に自信を失っていく。親子が陥りがちなこうした状況に、鳥羽さんは警鐘を鳴らす。

 「この子は何度言っても言うことをきかない」。親がよく口にする言葉だが、鳥羽さんは<うまく伝わらないのは、親が自分の「声」を発していないからであり、それは多くの場合、自分やパートナーの弱点につながっているから>と指摘する。親自身が信じていないことや分かっていないことを口先だけで言っても子どもには届かない。逆に子どもは、親が心の中に秘めている本音や背負っているものの方を敏感に感じ取る。だからこそまずは親自身が自分の弱さや迷いを認めることが大切だと説く。

 旧来の価値観が崩れ、不安定な社会の中、親ももがいている。価値観の多様化は<何を選んでも普遍的な正解にはたどりつけないという地獄>をもたらした。そんな中で子育てをする親たちに向け、鳥羽さんは言う。

 <正解を手放して、不安と慄(おのの)きの中で「いま」と対話をしたという感覚こそが、私たちの未来に光を与えます。子育ては解決すべき何かではなく、ただ「いま」を味わうものなのでしょう>

 これは、人生に置き換えても通じる言葉だろう。【上村里花】

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