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今週の本棚・なつかしい一冊

高階秀爾・選 『陰翳礼讃』=谷崎潤一郎・著

絵・寄藤文平

 (中公文庫・524円)

 文楽芝居の人形が、生身の人間以上に「女らしさ」を感じさせるのは、人形が女の指標を徹底的に排除したからだという『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』の文章に接した時、歌舞伎や文楽に熱中していた私は衝撃に近い思いに襲われた。言われてみればなるほど、文楽の舞台で活躍する小春や三勝(さんかつ)が女であることを示すものは、わずかに顔と両手の先だけに過ぎない。肝腎の身体は衣裳(いしょう)で隠されている。つまり闇に覆われている。その闇のなかにひそかに、しかし確実に女の存在が浮かびあがる。「女らしさ」は、人形本体のものではなく、本体を包み隠す闇から生まれてくる。

 このような美意識は、眼(め)に見える実体のなかにこそ美は宿るとする西欧的美意識とは対極に位置するものである。ギリシャ以来西欧世界で生み出された女性像は、いずれもそれ自体が「美」であることを強く宣言している。「ミロのヴィーナス」は、たとえ砂漠の中に置かれていても、堂々と「美」を主張するであろう。だが文楽人形は何も主張しない。そもそも女であることも隠している。人形の「美」は、観客の心の中に生まれてく…

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