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東京へ ともに歩む

毎日新聞

国際競技会で試技を成功させる重量挙げ女子59キロ級の安藤美希子=東京国際フォーラムで2019年7月6日、喜屋武真之介撮影

東京・わたし

五輪延期、パリでは「競技除外」? 重量挙げ女子・安藤美希子 葛藤しながら来夏を目指す

 来年夏に延期された東京オリンピックに向け、葛藤を抱えながら競技と向き合う選手がいる。重量挙げの女子59キロ級日本代表、安藤美希子(27)=FAコンサルティング。国際統括団体による不正発覚で将来の「五輪除外」の危機に直面した不安、新型コロナウイルスの感染拡大の影響の中、競技を続けることへの思いとは。【聞き手・倉沢仁志】

コーチとは近況を話す程度

 ――現在は、どのような環境で練習していますか。

 ◆所属先の施設(千葉県一宮町)で練習しています。本来の練習拠点は韓国ですが、渡航制限のために戻ることができません。現在はスナッチ、ジャークとも自己ベストの約9割に相当する重さまでに制限し、負荷をかけすぎないようにしています。

 ――2月の東アジア選手権前に韓国から帰国しました。

昨年の全日本選手権女子59キロ級で優勝し、表彰式で笑顔を見せる安藤美希子=岩手県奥州市で2019年5月25日、喜屋武真之介撮影

 ◆アジア選手権の開催地は韓国・ソウルだったので、そのまま残って合流する選択肢もありました。しかし、年明けから新型コロナウイルスのニュースが大きくなり始め、一旦帰国して大会に備えることにしました。結果的に東アジア選手権は中止となり、その後にコロンビアで予定されていた国際大会も出場できないことになったので、帰国して良かったと思っています。

 ――韓国で師事する金度希コーチとは、どのようにやり取りをしていますか。

 ◆練習の様子を撮影した動画を送って見てもらうという技術的な指導は、受けていません。週に1回程度連絡を取っていますが、日本や韓国の新型コロナの近況について話す程度です。

練習の頑張りどころが見つからない日々

 ――東京五輪の延期について、どのように受け止めましたか。

 ◆延期論が出てきた当初は「無理やりにでも年内にやってしまうのかな」と思っていました。1年延期という話を聞いた時は、「ああ、長いな」と。2020年を迎えてから、オリンピック本番までを逆算して調整してきたので、気持ちの切り替えが大変でした。国際大会もなかったので、練習の頑張りどころが見つからないという感じで、5月までモチベーションが上がらない日々が続きました。気持ちが切れると、不思議なことに過去に痛めた両膝をはじめ体のあちこちが痛くなってきて……。現在は、周囲の励ましのおかげで何とか心を保てています。

ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」での取材で葛藤を抱えながら競技と向き合う心境を語る安藤美希子=スクリーンショットより

 ――旧階級で実施された16年リオデジャネイロ五輪には58キロ級で出場。17年世界選手権は種目別ながらジャークで2位に入りました。さらに18年ジャカルタ・アジア大会は日本の女子選手で24年ぶりとなる銅メダルを獲得しました。新階級(59キロ級)で迎える東京五輪もメダル候補として期待されています。

 ◆リオ五輪に出場してから、東京ではしっかりと結果を残したいと思ってやってきました。アジア大会でのメダルは、精神的に大きかったですね。表彰台から国旗が揚がるのを見ることは、感動的でした。どんな場所(メダル)でも良いから2年後には日の丸を揚げたいと気持ちを新たにしました。

 ――昨年の世界選手権は日本選手で最上位の5位でした。表彰台との差をどう感じましたか。

 ◆2年前の階級変更により、一つ上だった階級(63キロ級)から下がってきた選手もいましたが、そうした選手とも対等に戦えるんだと思いました。ただ、やはり(スナッチ、ジャークの)トータルで230キロを突破しないとメダルは見えてこないと思っているので、そこを目指します。

練習環境に差 公平さ保てるか

昨年の全日本選手権で優勝し、旧階級からの「6連覇」を果たした安藤美希子=岩手県奥州市で2019年5月25日、喜屋武真之介撮影

 ――重量挙げを巡っては先日、統括団体である国際重量挙げ連盟(IWF)で不正が発覚しました。どう受け止めていますか。

 ◆やっぱり自分の競技の団体で不祥事が出たのは残念です。五輪競技として存続する上で、(24年の)パリ五輪に影響があるかもしれないというニュースを見た時は衝撃でした。私自身、現時点ではパリ五輪までの現役続行を視野に入れているので、重量挙げが実施競技から除外されたら、どうしようかと不安に思っています。

 ――延期となった東京五輪は、再延期はないと言われています。国際大会への出場のめども立っておらず、調整が難しいのではないでしょうか。

 ◆リオを経験し、五輪はいろいろな人が応援してくれると感じています。もし、これまでの報道で目にしたように「無観客でも実施」となれば雰囲気は違ってくると思います。また、五輪やそれを目指す選手だけが特別ではありません。こうした状況の下で五輪を本当にやるべきなのか、という話も出てくるでしょう。国内もそうですし、国際的にみても現段階で練習もできていない選手だっています。練習環境や準備期間が不公平な状態で五輪を迎えられるのかな、とも思ってしまいます。非常に複雑な心境です。

 ――練習拠点の韓国に戻る時期も未定だと聞きました。

 ◆この前、韓国の友人から「家の冷蔵庫の中のものが腐っているよ」と連絡があったんです(笑い)。1カ月で戻るつもりで家を出たのが、4カ月以上たっているのだから当然ですよね。韓国では本格的に活動が始まったようで、練習のペースや量を含め、もう一度韓国に戻って五輪に向けて準備するかどうか。悩ましいというのが本音です。でも、こちら(日本)では今まで以上に自分にとって何が足りないのかを考えました。改善に向けて自分のペースで取り組むことができています。そこをプラスに捉えていきたいと思います。

安藤美希子(あんどう・みきこ)

 1992年9月生まれ。千葉県白井市出身。埼玉栄高入学後、競技を始める。平成国際大1年時の2011年に全日本選手権で初優勝。その後も着実に力をつけ、旧階級の58キロ級ではスナッチ、ジャーク、トータル全てで日本新記録を樹立した。現在の59キロ級でも日本記録(スナッチ98キロ、ジャーク131キロ、トータル226キロ)を保持している。16年リオ五輪女子58キロ級5位。

倉沢仁志

毎日新聞東京本社運動部。1987年、長野県生まれ。2010年入社。高知、和歌山両支局を経て17年から東京運動部。レスリング、重量挙げなどを担当。高校時代には重量挙げで全国高校総体に出場したが、階級で10キロ以上軽い三宅宏実選手の記録には遠く及ばない。