特集

入管・難民問題

国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

特集一覧

「難民鎖国」は今

「難民は勇気をくれる存在」 元UNHCR駐日代表・滝沢三郎さん

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
子供たちに囲まれる滝沢三郎さん(前列左)=バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプで2018年、本人提供
子供たちに囲まれる滝沢三郎さん(前列左)=バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプで2018年、本人提供

 世界各地の難民問題を扱う国際機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)。現在、日本人の職員も各地の現場で汗を流している。長く難民支援にかかわり、日本人で初めてUNHCR駐日代表(2007~08年)を務めた滝沢三郎さん(72)に、世界の難民の現状や日本の難民政策をどう見ているのか聞いた。【鵜塚健/統合デジタル取材センター】

 ――世界の難民の状況は一層深刻化しているようです。

 ◆まず気になるのが、パレスチナ難民の問題です。私は1983年にUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に入り、ヨルダンやベイルートのキャンプで多くのパレスチナ難民に会いました。パレスチナは、国連によって土地が分割され、さらに土地が奪われようとしています。イスラエルのネタニヤフ政権が入植地を併合しようとし、それを米国のトランプ政権が支えています。問題は悪化するばかりで、解決の道筋が見えてきません。パレスチナ難民の不満、怒り、挫折感、絶望感が強まっているのではないでしょうか。パレスチナ問題が悪化すれば、周辺国も巻き込んで中東全体の不安定化につながり、日本にも影響があります。

 もう一つは、ミャンマーから逃れ、バングラデシュのキャンプにいる100万人を超すロヒンギャ難民です。2年前にキャンプを訪れましたが、衛生状態は極めて悪く、過密状態。もし新型コロナウイルスの感染爆発が起きたら、多くの死者が出るでしょう。ロヒンギャ難民に限らず、世界中の難民キャンプは同様に過密で、感染拡大の恐れがあります。

 ――新型コロナで、難民の状況はどう変わるでしょうか。

 先進各国は近年、難民の流入を阻止してきましたが、新型コロナの感染拡大は、その流れを加速させる可能性があります。「難民保護という前に、我々の健康や命が大切だ」と言えば、難民を入れないための雰囲気ができます。政治家にとっては、コロナは難民を拒む最適の口実になるのです。難民条約の根幹である庇護(ひご)態勢が崩れてしまうのが心配です。日本にやって来て、難民認定申請をしようとする外国人の数も減るでしょう。

 ――日本の難民政策の現状をどう見ますか。

 ◆2019年に日本では1万375人の難民認定申請があり、44人しか認められていません。法務省の難民認定制度にはいくつかの問題があり、認定数が少なすぎるのは確かです。一方で、申請者の中には、明らかに難民条約が定義する難民に当てはまっていない人がいるのも事実です。申請者数が増えたのは、外国人労働者政策の失敗と見ることもできます。これまで正面から外国人労働者を入れようとしなかったため、結果的に難民認定制度を利用して入国しようとする人が増えました。

 ――日本の難民認定数は依然少ないままです。

 ◆出入国在留管理庁(入管)には、不法入国・在留者を取り締まり、秩序を第一とする独特の文化があり、難民認定は本当に付け足しのようなもの。難民問題が国際的な課題だという意識が欠けています。入管の組織図を見ると、難民認定室は出入国管理課の下に所属しており、その重要性が低いことがわかります。

 では、どう改善するのか。問題は、難民認定機関の…

この記事は有料記事です。

残り2296文字(全文3598文字)

【入管・難民問題】

時系列で見る

次に読みたい

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

注目の特集