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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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アイヌの人々には…

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 アイヌの人々には、パヨカカムイという、病気をまき散らす神の言い伝えがある。疫病を広めようと集落に立ち寄ったが、村人の語るユカラ(少年叙事詩)に聞きほれて仕事を忘れたため、村は難を逃れたという(絵本「パヨカカムイ」文・萱野茂)▲そんな病神が去るのを一日千秋の思いで待っていたのが、北海道白老町に整備されたアイヌ文化の復興拠点「民族共生象徴空間」の関係者だろう。施設の愛称は「ウポポイ」。新型コロナウイルスの感染拡大のため2度にわたりオープンが延期され、やっと来月12日に開業の運びとなった▲ウポポイは、政府が国立博物館や公園、アイヌ民族の遺骨を納めた慰霊施設などを整備した複合拠点だ。アイヌ文化を伝える工芸品など収蔵品は1万点にも及ぶ▲今月、緊急事態宣言の解除を受けて、地元町民を対象に初の内覧を実施した。アイヌ語を「第1言語」として優先した表示や、江戸時代に作られた木造船など豊富な展示が関心を呼んだ▲北海道では、コロナ禍がなおくすぶっている。さきの内覧でも参加者への検温や、距離を保つなどの対策が徹底された。来月にスタートしてからも、当面は感染状況をにらみながらの手探りの発進とならざるを得まい▲ちなみにウポポイという耳に残る愛称は、アイヌ語で「おおぜいで歌うこと」を意味する。存続の危機にあるアイヌ文化を守り、再興する決意の証しとなるべき拠点である。パヨカカムイが仕事を忘れ、共生の歌声が響き渡る日を待ちたい。

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