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検察庁法改正案の廃案 人事介入の懸念は消えぬ

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 検事総長や検事長らの定年を内閣の裁量で最長3年間延長できる特例を盛り込んだ検察庁法改正案が、先の国会で廃案になった。

 政府は、この特例を削除したうえで、検察官の定年を引き上げる改正案を再提出する方針という。

 だが、法案を修正すれば済む問題ではない。任命権者の判断で定年延長を可能とする国家公務員法の規定が、検察官にも適用されるという政府の法解釈は、そのままになっているからだ。

 問題の発端は、東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長を政府が1月に閣議決定したことである。当時は、重大で複雑な事件の捜査・公判に対応するためと説明されていた。

 その後、黒川氏は賭けマージャンで辞職した。法務省幹部は国会で、辞職によって捜査・公判に特段の支障は生じないと答弁した。

 ならば、何のための定年延長だったのか。政権に近いと目された黒川氏の検事総長就任に道を開くためだった疑いが残ったままだ。

 政府は従来、国家公務員法は検察官に適用されないと解釈してきた。これを国会で指摘されると、安倍晋三首相は法解釈を変更したと言い出した。

 それなら、黒川氏の定年延長を決めた時に説明すべきだった。政府は「国民生活に影響がないためだ」と強調するものの、検察の独立性に関わる重大事である。

 そもそも、三権分立に影響する法解釈を時の政権だけの判断で変えてしまうのは問題だ。

 改正案の特例も、黒川氏の人事を後付けで正当化するものにしか見えない。昨秋の段階で、法務省の原案に特例はなかった。

 森雅子法相は国会で改正案の策定経緯を文書で明らかにすると約束したが、まだ示されていない。

 黒川氏の辞職後、森法相は法務・検察行政刷新会議を設けると表明した。ただ、黒川氏の定年延長や検察庁法改正案は議題にならないという。

 しかし、今回の事態を招いた根本原因は、前例のない人事だ。それを議論しない限り、検察の信頼回復にはつながらない。

 政権が恣意(しい)的に、検察人事に介入できる懸念は、今も消えていない。政府は直ちに、変更した法解釈を取り消さなければならない。

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