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宇宙新時代

しつこく衛星をストーカー行為? ゾンビや危険な「密」も…新しい宇宙の常識

米国防高等研究計画局(DARPA)が今年から低軌道に打ち上げる小型衛星群の想像図。宇宙を網の目で監視する技術の確立を急ぐ=DARPA提供

 宇宙が冒険や夢を実現する場だけではなく、安全保障や経済活動の主戦場となってきた。昨年から今年にかけて、米国やフランス、日本で宇宙軍や部隊が設立された。国内では、宇宙安全保障の重要性を指摘し、宇宙開発を経済成長の推進力に据える新しい宇宙基本計画が月内にも閣議決定される。「ニュー・スペース」時代とも呼ばれ、急速な変貌を遂げる宇宙開発の現状と課題を読み解く。 

   ◇

 今年1月29日、米国の人工衛星同士が米東部上空で衝突する可能性が高まった。いずれも10年以上前に運用を終え、地上から制御することができない「ゾンビ衛星」。米国の宇宙関係者は、祈るように空を見上げるしかなかった。

 「わずか18メートルの差ですれ違った」。それから10日ほど後、米商務省で宇宙政策を担当するオコンネル海洋大気庁宇宙商業室部長は、二つの衛星が幸いなことにニアミス(異常接近)にとどまったと米上院公聴会で証言した。部長は「同様の事象がこの日、5件もあった」と付け加えた。

 宇宙には、使命を終えた衛星や、打ち上げに使ったロケットの残骸が数多く放置されている。さらに、2007年の中国の衛星攻撃兵器(ASAT)実験などで生まれた数千個の破片も漂う。これらは宇宙ごみ(デブリ)と呼ばれ、この20年で2倍に増えた。今後も「増殖」することが確実だ。私たちの生活に欠かせなくなっている衛星にぶつかって壊されてしまう恐れが高まっている。

 14基の衛星を運用する日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も、この事態を深刻に受け止める。「19年度は毎日、200件を超す危険情報があり、JAXAの衛星に危険が及ぶ情報は2日に1回の割合であった」。衝突を避けるため、18年度は6回、19年度は3回、衛星を動かしてどうにか衝突を回避した。余計な燃料を使うため衛星の寿命は縮まるものの、打ち上げ費用を含め数百億円もする衛星を守るには背に腹は代えられない。

 ただし、デブリ除去に使う技術は、一歩間違えば、他国の衛星を攻撃するASATに転用される可能性もある。軍事にも使えるデュアルユース(軍民両用)技術だ。宇宙の憲法と呼ばれる宇宙条約(1967年発効)は、核兵器など大量破壊兵器の配備こそ禁じるものの、それ以外の兵器は野放しとなっている。

 米中露の3カ国は、宇宙空間で他国の衛星へ近づいてはストーカーのようにへばりつく実験を繰り返す。どんな衛星にも接近できる能力を示し、威嚇する目的と見られる。地上や航空機から、レーザーで衛星を攻撃する技術の開発も急ぐ。まだ衛星を破壊するほどの高出力レーザーは開発されていないが、衛星のカメラやセンサーに強い刺激を与え、機能を一時的にまひさせることは可能とされる。

1ミリ大でも時速100キロのボールと同じ衝撃

 「小型人工衛星にレーザーを積み、衛星や宇宙ごみ(デブリ)に当てて廃棄する」「どんな衛星でもつかみ、一緒に大気圏に再突入して燃やしてしまう」。宇宙のごみを環境問題と捉え、日本をはじめ世界各国の企業がごみを減らす挑戦に乗り出している。

 地球からの観測を踏まえた推定によると、10センチ以上の宇宙ごみ(デブリ)は約3万4000個、1~10センチなら約90万個、1ミリ以上なら約1億3000万個に達するとされる…

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会川晴之

1987年毎日新聞入社。盛岡支局、東京本社経済部、政治部、ウィーン支局、欧州総局長(ロンドン)、北米総局長(ワシントン)などを経て、2020年1月から専門編集委員。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度のボーン・上田記念国際記者賞、日本発の核拡散を描いた毎日新聞連載の「核回廊を歩く 日本編」で、16年の科学ジャーナリスト賞。著書に「核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態」(毎日新聞出版)。

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