昨年から今年にかけて、米国、フランス、日本で宇宙軍や作戦部隊が相次いで発足した。映画「スター・ウォーズ」で描かれた世界や、ウルトラマンで登場した「地球防衛軍」のようなものがいよいよ現実になるのか? しかし、「敵」は、ダース・ベイダーでもバルタン星人でもない。近年、宇宙への進出が著しい中国とロシアだ。
ソ連が1957年に人類初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げてから60年以上たち、今や60を超す国・地域が衛星を運用する。その数は今年3月末時点で約2300基にのぼる。カーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、果ては現金自動受払機(ATM)に至るまで、私たちの生活は宇宙の「インフラ」なくしては成り立たなくなっている。
軍事の分野でも同様だ。大洋を航海する潜水艦が正確な位置を知るには全地球測位システム(GPS)衛星が不可欠で、部隊との連絡や、湾岸戦争で初めて使用された精密誘導弾、弾道ミサイルの発射探知などにも衛星を使う。防衛研究所の福島康仁主任研究官は「米国の安全保障の要となる核戦略は、宇宙に配備する早期警戒衛星と通信衛星が支えている」と、その重要性を説く。
だが、衛星は攻撃に対して極めて弱い。67年に発効した宇宙条約は、核兵器など大量破壊兵器の配備を禁止するが、それ以外の兵器については規定がない。ロシアは宇宙が米国の「アキレスけん」と見ているとされ、米国側は、有事の際に衛星が「おいしい標的になる」(ハイテン統合参謀本部副議長)と警戒を強める。
米ソ両国は東西冷戦時代から、衛星攻撃兵器(ASAT)の開発にしのぎを削った。冷戦中、米国は地上から衛星を攻撃する核ミサイル、ソ連は宇宙空間に配備する「キラー(攻撃)衛星」の実験を繰り返した。米国には通称「スター・ウォーズ計画」と呼ばれる構想もあった。
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米ソの寡占状態に分け入ったのが中国だ。宇宙専門の米シンクタンクSWFのサムソン氏は取材に「2003年に…
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1987年毎日新聞入社。盛岡支局、東京本社経済部、政治部、ウィーン支局、欧州総局長(ロンドン)、北米総局長(ワシントン)などを経て、2020年1月から専門編集委員。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度のボーン・上田記念国際記者賞、日本発の核拡散を描いた毎日新聞連載の「核回廊を歩く 日本編」で、16年の科学ジャーナリスト賞。著書に「核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態」(毎日新聞出版)。
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