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新型コロナウイルス対策について医学的見地から助言してきた専門家会議を廃止することを、政府が決めた。
特別措置法に規定がなく、西村康稔経済再生担当相は「位置付けが不安定だった」と説明している。今後、特措法に基づき新たな組織を設ける。感染症の専門家のほかに、経済の専門家や知事、病院関係者らを加えるという。
専門家会議は、感染リスクが高い「3密」回避の定着などで重要な役割を果たした。主体的に提言を繰り返したのは、感染拡大への危機感からだ。
踏み込みすぎとの批判はあったが、そもそも政府がコロナ対策で本来の役割を果たせていなかったことに問題がある。
この4カ月余りを振り返ると、政府が専門家会議を都合よく扱ってきた面は否めない。
安倍晋三首相が小中高校の一斉休校を唐突に打ち出した際は、専門家会議の意見を求めておらず「独断」と批判された。
感染が拡大すると、一転して政府方針の説明で「専門家の意見」を強調するようになった。ところが、感染者数が減少すると、安倍首相は専門家会議の最終的な意見を聞く前から、緊急事態宣言の全面解除に前のめりになった。
米国など経済活動の再開を優先した海外では、感染が再拡大している。日本国内でも、東京を中心に感染者の確認が続いている。
感染症対策は経済状況との微妙なバランスが必要になる。専門家会議も自己検証で、多様な分野の知見を結集した組織にする必要性を指摘している。
ただ、今回の廃止に伴い、経済活動を優先するあまり、感染症対策の科学的知見が軽視されることがあってはならない。
新組織では、バランスの取れた人選が大切だ。議事録の公開も、当然必要になる。
地方自治体が持つ感染者情報などの迅速な共有は、確実にしておかなければならない。感染状況の評価や対策に国民の理解を得るには、適切なリスクコミュニケーションも欠かせない。
政府は、専門家が示す科学的な見解の内容とそれを踏まえた政策決定の経緯を、丁寧に説明していくべきだ。