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磯田道史・評 『ビーズでたどるホモ・サピエンス史 美の起源に迫る』=池谷和信・編

『ビーズでたどるホモ・サピエンス史 美の起源に迫る』

 (昭和堂・3080円)

 ビーズの研究は絶対的に重要である。ビーズは「素材に穴をあけて紐(ひも)でつなげたもの」だが、ほかの道具とは決定的に異なっている。ビーズは無くても死なない。槍(やり)や火打石の如(ごと)き、生活必需の実用品ではなく、愛玩物である。ところが、石器時代の飢餓のなか、ビーズ作りに熱狂する壮大な「無駄」をやった我々ホモ・サピエンスが生き残った。ネアンデルタール人もビーズをもったが、マンモスの牙で1万点のビーズを作る執念をみせたのは我々である。他の動物とは違う明らかな「変態」で、この変態性が文明を作った。

 米スミソニアン博物館の展示によると、人類が槍や刃をもったのは25万年前。ビーズをもったのは12~10万年前である。しかし、ビーズはすぐには定着せず、7万年前に「認知革命」がおきて象徴シンボルにこだわる生き物にホモ・サピエンスが変化。5万年前に絵画がうまれ、4・5万年前からビーズが我々に定着した。だから、ビーズは絵画に先行する「最古のアート」といわれる。

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