メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

提言次々のコロナ専門家会議 なぜ「廃止」表明、何が問題だったのか

専門家による基本的対処方針等諮問委員会で発言する西村康稔経済再生担当相(右)と尾身茂会長=東京都千代田区で2020年5月14日午前10時34分、北山夏帆撮影

 新型コロナウイルス感染の第2波が懸念される中、政府が対策を話し合う専門家会議の廃止を表明した。「人と人との接触の8割減」「新しい行動様式」など基軸となる提言を次々と打ち出し、存在感を示す一方で、議事録を残していないことで批判を浴びたこともあった。一体、専門家会議の何が問題だったのか。廃止すれば問題は解決するのだろうか。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

 「国の政策や感染症対策は専門家会議が決めているというイメージが作られ、あるいは作ってしまった側面もあった」。専門家会議の脇田隆宇座長らは24日開いた記者会見で、会議のあり方をまとめた提言を発表し、こう指摘した。提言ではこれまでの活動を振り返り、状況分析だけでなく対策も自ら発信するなど、感染拡大への危機感から「前のめり」になっていった過程を検証。「本来の役割以上の期待と疑義の両方が生じた」と総括し、政府に会議の役割の明確化などを求めた。

 同じ日、西村康稔経済再生担当相は「位置づけが不安定だった」として専門家会議を廃止し、地方自治体やリスクコミュニケーションの専門家らも加えた「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を新たに設けると発表した。会見中に廃止の発表を聞いた尾身茂副座長は「知りませんでした」と述べ、会議メンバーに事前の相談がなかったことを明らかにした。さらに、政府の意向で会議の提言案が修正されたことがあったことも明かした。

 国民から見るとあれだけ重大局面で「活躍」していた専門家会議が廃止とは、唐突な印象を受ける。そもそも、専門家会議とは何なのか。まずは設立経緯と活動内容を振り返ってみたい。

 前身は、2月初めに厚生労働省が国内での流行に備えて設置した「アドバイザリーボード」だ。それ以前から、厚労省と一部の専門家が断続的に意見交換を行っていたという。

 1月30日に、首相や閣僚らでつくる「新型コロナウイルス感染症対策本部」が、旧新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき発足する。専門家会議は2月14日に発足し、16日に初会合が開かれた。正式名称は「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」で、構成員の大半は感染症専門の医師だ。ホームページ上に掲示されている設置根拠を説明する資料によると、感染症対策本部の下で、対策について医学的な見地から助言などを行うことを目的としている。資料には「感染症対策本部決定」とのみあり、法的根拠は示されていない。つまり、法的な位置づけはない組織だ。庶務は内閣官房が務める。

 実は2月中旬以降、専門家によるチームが次々と登場している。2月25日には「厚生労働省クラスター対策班」が発足。旧特措法が改正されて新型コロナも対象になると、3月26日には旧法の際から設置されていた「新型インフルエンザ等対策有識者会議」の新しい委員が決まった。有識者会議は感染症の専門家だけでなく、経済団体や地方自治体、メディア関係者らも委員になっている。

 有識者会議の下には、「基本的対処方針等諮問委員会」が設置され、3月27日に初会合が開かれた。専門家会議の尾身副座長が会長に就任し、会議の主要メンバーである脇田座長や、岡部信彦氏や押谷仁氏も加わった。諮問委員会は特措法に基づき、緊急事態宣言などにつながる基本的対処方針を審議し、首相に意見を述べることを目的としている。

 非常に分かりにくいが、専門家会議、クラスター対策班、有識者会議、諮問委員会と主要メンバーが重なる組織が複数存在している状態だ。

 乱立する組織の中で、最も目立ったのが専門家会議だった。発足直後から会見を開き、独自の見解や提言を発表。「クラスター対策優先」「3密回避」「人と人の接触の8割減少」「新しい行動様式」などの方針を示し、メンバーはメディアにも頻繁に出演した。4月にはメンバーらで「専門家有志の会」を結成し、市民向けにウェブでの情報発信も始めた。尾身氏は諮問委員会会長として、緊急事態宣言発表時などに安倍晋三首相の記者会見にも同席し、記者の質問に回答していた。

 一方、政府側も専門家会議に寄りかかる姿勢が目立った。安倍首相や閣僚は事あるごとに「専門家の判断」「専門家会議の意見を踏まえて」などと発言。公表されている議事概要や提言などを見ても、その内容がそのまま政府の対策として基本的対処方針に盛り込まれていたり、首相が記者会見で述べていたりする。その方針の妥当性や、国民の行動にまで踏み込むことについて、専門家会議に批判が寄せられることもあった。

 こうした専門家会議のあり方の何が問題だったのか。

 「専門家会議が前のめりになった背景には…

この記事は有料記事です。

残り1931文字(全文3830文字)

牧野宏美

2001年入社。広島支局、大阪社会部、東京社会部などを経て19年5月から統合デジタル取材センター。広島では平和報道、社会部では経済事件や裁判などを担当した。障害者や貧困の問題にも関心がある。温泉とミニシアター系の映画が好き。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 大阪で新たに151人コロナ感染 重症者は70人で過去最多

  2. 首相あいさつ93%一致 広島と長崎、過去例とも類似 被爆者「ばかにしている」

  3. 「パンパン」から考える占領下の性暴力と差別 戦後75年、今も変わらぬ社会

  4. 「次期総裁は岸田氏か石破氏」 小泉純一郎元首相と山崎拓氏が一致

  5. 靖国参拝の小泉進次郎氏「大臣になってもちゅうちょなかった」 4閣僚が参拝

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです