毎日新聞
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伊勢参りの道中の喜六(きろく)と清八(せいはち)、めし屋に立ち寄った。上方落語「煮売屋(にうりや)」は、2人が店のおやじにいろいろからんで、酒の注文となる。聞けばこの村には銘酒(めいしゅ)があって、「村さめ」「庭さめ」「直(じき)さめ」という▲おやじが言うには、村を出るころで酔いがさめるのが「村さめ」、庭に出るとさめるのが「庭さめ」だ。「直さめは?」と尋ねると「飲んでるそばからさめる」。「酒にぎょうさん水混ぜるんやろ?」「いえ、水ん中に酒混ぜます」▲銘酒と称しもっともらしいブランドをつけた水増し酒だが、ちゃんとランク分けをしていたのは良心的というべきか。さてこちらは落語でなく、売り手の宣伝を信用するしかない今日の車のハイオクガソリンをめぐる奇々怪々な話だ▲石油元売り各社がそれぞれ独自開発し、ブランドを冠していたはずのハイオクガソリンである。だが貯蔵タンクは他社と共同利用され、スタンドには「混合出荷」されていたのが実態という。小紙特報にあぜんとした方もおられよう▲このうちコスモ石油のスーパーマグナムはエンジンの汚れを取り除く性能を宣伝していたが、実際には汚れにくくなる添加剤しか入っていなかった。混合出荷では独自性能の意味もなく、はなから顧客の信頼など眼中になかったのか▲実質上あまり差のなかった各社ハイオクのブランドだが、これからどんなイメージを背負っていくのだろうか。ちなみに「村さめ」は水っぽい酒と上等の酒という相反する意味をもった隠語(いんご)として広まった。
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