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「この不自由の自由さがたまらない」 劇団チョコレートケーキがウィズコロナ時代の演劇をしなやかに模索

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俳優が装着する予定の小型カメラを示す日澤雄介。スタンダード版とともにアクターカメラ版として配信する=濱田元子撮影
俳優が装着する予定の小型カメラを示す日澤雄介。スタンダード版とともにアクターカメラ版として配信する=濱田元子撮影

 劇場での公演始動の知らせが、続々と届いている。小劇場だけでなく、7月からは東京のPARCO劇場や新国立劇場も相次ぎ再開する。演劇界もコロナ禍で一気にリモート化が進み、ここ2カ月、芝居を見るのはオンライン配信か、過去の映像配信という状態。「密」が演劇の命ではあるが、感染症対策のため舞台も客席も、まだまだ「3密」を回避したソーシャルディスタンス状態になりそうだ。その中で、さまざまな形で配信との共存の試みも続く。

Zoomでお客さんとディスカッションも

 歴史から現代を照射する硬派な作品が人気の「劇団チョコレートケーキ」は7月31日~8月10日、東京・下北沢の駅前劇場で座付き作家、古川健の書き下ろし「無畏(むい)」を上演する。劇場公演と並行して有料で映像配信(8月5~11日)も行う。主宰で演出家の日澤雄介は「変化を恐れるのではなく、変に変化しないように。変化した先に演劇というものの一番すてきなものがなくなっていた、ってならないようにしたい」。ウィズコロナ時代の演劇公演の形を、しなやかに模索する。

 コロナによる劇団公演の延期や中止はなかった。「劇団としては奇跡というか、ラッキーでしたね」。外出自粛の期間中は家で過ごしていたが、劇団活動は活発に続けたという。「過去の映像を配信したほか、Zoom(ウェブテレビ会議システム)を使ってお客さんと一緒に作品を見てコメンタリー(注釈)をつけたり、ディスカッションをしたりしました」

 Zoomで劇団会議も公開したというのも、斬新な試みだ。「ちょっと先のことをみんなで考えませんか、と言って、2022年の劇団公演について『古川君はどういうテーマに興味があるの?』とか、『劇場はどこを狙おうか』とか雑談交じりにやりました」

 公演がないにもかかわらず、かなりポジティブな活動を続けていたよう。「お客さんとどう接していこうかというのは考えていました。生活様式のみならず、演劇の業界も様式を変えていかなければならないけど、人と接しないでどうするんだ、と。映像はこれまで出していませんでしたが、家にいてもらうために配信しました。コメンタリーも以前、劇場のロビーでやっていたこと。劇場に足を運んでもらうにはどうしたらいいかと考えていて、作品のクオリティーも大切ですけど、ほかに何かないだろうかと考えていたんです」

 コロナ下におけるオンラインの活用も、その発想とノウハウの蓄積の延長線上に生まれた。「Zoomはいながらにしてできる、すごいツールだぞってなって。これならばやればできるんじゃないかと思いました」

配信は客席視点と登場人物目線の2バージョン

 実際、劇場で公演を再開するとなると、立ちはだかるのが大幅な客席減だ。感染対策のガイドラインに従えば、劇場定員の半分ほどにしかならない。

 「劇場に足を運んで、空間を共有するというのが小劇場にとって一番の醍醐味(だいごみ)なので。だから、これまでは映像化を積極的にしてこなかった。また再演を重ねる劇団なので、再演の時に見に来てほしいと思っていました。とはいえ、お客さんを呼ぶにしても、かなりキャパシティーは厳しいし、こういう時期に上演をすること自体、お客さんは消極的になってしまうと思う。採算面もあるのですけれども、それらを考えて映像の配信もやろうかなと思いました」

 その配信にしても、二つのバージョンがあるという凝…

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