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#最後の1年

マウンドを降りた152センチ右腕の新たな道 ソフトボール名門・佐賀女子エース

鹿島高との決勝で力投した佐賀女子高の大石華梨。152センチだがマウンドでは存在感抜群で大きく見える=佐賀市健康運動センターで2020年6月21日午前11時11分、尾形有菜撮影

 キャッチャーミットにボールが収まる乾いた音が勝利を告げた。佐賀女子高ソフトボール部3年のエース、大石華梨(かりん、18歳)が152センチの全身を使って投じた直球にバットは空を切った。6月21日、佐賀市健康運動センター。新型コロナウイルスの影響で中止となった佐賀県高校総体の代替大会決勝で、宿敵の鹿島高を5―0で破った。「やりきった」。スランプにも活動自粛にもめげず、悲願だった雪辱を果たすと、日に焼けた顔に白い歯がのぞいた。

 生まれ育った同県神埼市で白球を追い始めたのは小学3年の時だった。ただ最初は同じ白球でも軟式少年野球だった。二つ上の兄大雅(たいが)さん(19)のいた地元チームに女子で唯一加わり、腕を磨いた。同市立千代田中でソフトボールに転向し、頭角を現した。2年の時、投手として出場した九州大会でストライクが入らずに敗れた悔しさでスイッチが入った。昼休みなど時間を見つけては練習を重ね、3年時には同校を初の全国中学校体育大会(全中)出場に導いた。

 女子日本代表投手の藤田倭(やまと、29歳)がいた2006年に全国高校総体で優勝した経験のある名門・佐賀女子高に進むと、朝練が始まる前に自主練習に励む熱心さで力を伸ばした。壁にぶつかったのは昨年6月の県高校総体決勝だった。好調さを買われて3年生エースに代わって先発したが、「3年生を勝たせたい」との重圧が手元を狂わせた。四回のピンチで甘く入った球を痛打された。それが決勝点となり、0―1で5連覇を逃した。この場面、盗塁を阻止できなかった捕手の岡本萌花(もえか、17歳)の試合後の泣き顔が目に焼き付いた。その対戦相手こそが鹿島高だった。「打たれたのは自分なのに、萌花を落ち込ませてしまった。萌花に笑ってほしい」と雪辱を誓った。

 だが、しばらくはスランプに陥った。「自分のせいで試合を落とした。自分が取り返す」。気合は空回りし、思い通りの球が投げられなくなり、練習試合でも出番が減った。津上さおり監督(47)は「あの敗戦は調子のよかった打線を過信して送りバントを使わなかった私の采配ミス。でも大石は責任を一人で背負った。その後はどこも状態は悪くないのに『調子が悪い』と言っていた」と振り返る。

 だが同級生たちの言葉を借りれば、「落ち込んでも努力してはい上がる」のが大石だ。冷静に自らを見つめ直した。肩に力が入り、マウンドで独り相撲を取っていたことに気づいた。バックを信じて、打たせて取る原点の投球スタイルを思い返した。短距離ダッシュや長距離走、筋力トレーニングなど地道でハードな冬場の練習も乗り越えて決戦の日に備えた。共に歩む岡本も「球威が戻ってきた」とミットから大石の復調を感じていた。

 そんな時、流行し始めたのが新型コロナウイルスだった。3月、学校は休校になり、部活動も自粛となった。近くに暮ら…

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尾形有菜

毎日新聞東京本社運動部。1992年、宮城県生まれ。2014年入社。宮崎、大分両支局を経て、20年から現職。運動経験はないが、高校時代は放送部(朗読)に所属して県大会で優勝。総文祭という文化部の「インターハイ」出場経験も。父と弟2人、妹が元ラガーマンのラグビー一家で育った無類のラグビー好き。

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