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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 ロシア最東端の少数民族の居住地にモスクワから援助物資の肉の缶詰がラジオやテレビ、新聞・雑誌と一緒に届いた。ラジオをつけるとプーチンが話していた。テレビをつけるとプーチンの姿が映っていた▲新聞と雑誌にはどのページにもプーチンの写真がある。住民は恐ろしくなり、缶詰を決して開けようとはしなかった――アネクドート(風刺小話)ゆえに敬称は略させてもらったが、8年前のロシア大統領選当時はやった笑話という▲今回はモスクワで投票した人に抽選で約6000円相当の商品券があたる特典もあった。高い得票率をめざし、政権も力ずくの集票活動を繰り広げた憲法改正をめぐる全ロシア投票である。暫定結果によれば8割近くが賛成となった▲この改憲で2024年に4期目の任期が切れるプーチン大統領の5選が可能になり、最長36年まで大統領にとどまれることになる。00年の大統領就任から首相をはさんですでに20年間ロシア最高権力者として君臨している同氏である▲プーチン人形を開けると中にはまたプーチン人形、それが次から次へと出てくるマトリョーシカ(入れ子人形)のような21世紀ロシア政治である。だが、当の政権はコロナ禍などで、むしろ求心力にかげりを見せているともいわれる▲領土割譲禁止などの愛国主義や保守的な価値観も目立つ200項余の改憲である。どこを開いても浮かび上がるプーチン氏の声や顔が、ますますロシアを軍事と石油に依存する文明に閉じこもらせるのが怖い。

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