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ロシアの憲法改正 専制と自国優先の危うさ

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 ロシアのプーチン大統領が主導した憲法改正案が、国民の圧倒的賛成多数で承認された。プーチン氏が2036年まで大統領職にとどまる道が開かれた。

 200以上にわたる改正項目は、一括して全国投票にかけられた。事実上、プーチン氏の信任投票となった。

 最大の柱は大統領の任期だ。「2期」に限定されるが、改憲前の任期は算入されない。このため、通算4期目のプーチン氏は24年の任期満了後もさらに2期12年、83歳まで君臨できる。

 退任後は「終身上院議員」となり、身分は「不可侵」と定められた。終身大統領制を導入したのも同然だ。

 反体制派の弾圧などで強権的と言われてきたプーチン氏のさらなる専制化が懸念される。

 愛国心を高めるしかけも多い。第二次世界大戦を念頭に、「祖国を守った人々を追悼し、歴史的真実を守る」という条項はその一つだ。大戦勝利の記憶を神聖な域にまで高め、求心力につなげるプーチン氏の政治を反映している。

 婚姻は「男女の結びつきによる」と初めて規定し、LGBTなど性的少数者の権利を認めない姿勢を明確にした。プーチン氏の支持母体であるロシア正教会の主張でもある。改正憲法が示すのは、大統領の不可侵性であり、神聖な国家像だ。

 国際協調よりも、自国の利益を優先する考え方が盛り込まれていることも憂慮される。「憲法と矛盾する国際機関の決定は適用されない」との条項が加えられた。

 ロシアはこれまでも一方的にクリミア半島を自国領に編入するなどし、欧米諸国からの強い反発を招いてきた。ロシアが独善的となり、世界の中でさらに孤立化を深める危険がある。

 領土の割譲も禁止される。「隣国との国境画定や再確定を除き、ロシア領の割譲やその呼びかけは認めない」と定めた。

 北方領土について、ロシアは「第二次大戦の結果、自国領になった」と主張してきた。今後、返還に応じない根拠として改正憲法を持ち出してくるだろう。平和条約締結交渉は厳しさを増す。

 日本は、対露交渉に臨む態勢を見直す必要がある。

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