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「メキメキ」崩れる山、流される家 夫は自力ではい出すも妻は半日後に…熊本豪雨

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土砂崩れで2階部分(右)だけが約20メートル押し流された矢野まさ子さん方跡。矢野さんは土砂に埋まった1階(左)で見つかった=熊本県芦北町伏木氏で2020年7月7日午後0時2分、浅野翔太郎撮影

 熊本県南部を襲った記録的豪雨の被災地、同県芦北町伏木氏(ふしき)地区では、土砂崩れに巻き込まれた矢野まさ子さん(67)が亡くなった。山間部の集落は道路寸断などで孤立し、住民らが懸命に救出を試みたが「無事でいて」との願いはかなわなかった。一方、同県人吉市は8日、家屋の床上浸水が3775棟、床下浸水が906棟とする速報値を発表した。

亡くなった矢野まさ子さん=住民提供

 矢野さんと幼なじみで隣に住む区長の中山幹男さん(75)によると、4日午前4時半ごろ停電して近くの川の水が押し寄せた。携帯電話は通じず、中山さんは電力復旧を要請するため、電話が比較的通じやすい約1キロ離れた高台の駐車場を目指した。「気をつけて」。家の中から笑顔で手を振る矢野さんの姿が見えた。

 約15分後、電話を終えて戻ったところ「メキメキ」という音と共に山が崩れ、矢野さん宅が土砂に押し流された。1階はつぶれ、2階の屋根は約20メートル先まで押し流された。中山さんらが必死に名前を叫ぶと、矢野さんの夫の解光(ときみつ)さんが自力で泥の中からはい出し、よろよろと立ち上がった。泥水を飲んでいた解光さんは「息ができん」と苦しそうだった。中山さんが「まさ子さんは」と尋ねると、解光さんは「その辺りにいる。声がした」と答えた。中山さんは解光さんを背負って自宅に運んだ。

 住民らはシャベルやくわで土砂をかき出し、矢野さんを捜したが見つからなかった。中山さんは高台から電話で警察や消防などに助けを求め続けたが、道路が寸断された集落に救援が着いたのは半日後の4日夕だった。ドクターヘリが解光さんを搬送し、自衛隊員約20人が矢野さんを捜した。着衣の一部が5日午後4時過ぎに見つかったが、竹の根などが邪魔になり、矢野さんが助け出されたのは更に約5時間後の午後9時ごろ。その後、死亡が確認された。

 中山さんは矢野さん夫妻と共にこの地で生まれ育ち、きょうだいのように過ごしてきた。「とにかく良か夫婦で、まさ子さんは優しい人。地区の活動もようしてくれた。とにかく息をしといてくれと願ったが、駄目でした」。中山さんは言葉を詰まらせた。

熊本・人吉市と芦北町、2夫婦が亡くなる

 浸水被害が広がった人吉市下林町では西橋欽一さん(85)と妻恵美子さん(82)が亡くなった。

熊本の豪雨で亡くなった西橋恵美子さん

 恵美子さんと親しかった同市上林町の立山重子さん(79)は「積極的で世話焼きというのかな。とにかく明るくて活発。20年前からボランティア活動を一緒にしていた。テニスや沖縄の踊りの練習もよくやっていた」と悲しんだ。

 芦北町小田浦地区では自宅が土砂崩れに巻き込まれた川田武人さん(72)と妻節子さん(69)が死亡した。

 近所の上野秀男さん(84)によると、武人さんは釣りが好きで、釣り上げたコノシロやチヌを持って来てくれた。ミカン栽培にも熱心だった。普段は無口だが焼酎を飲むと冗舌になり、上野さんと釣りやミカン作りの話をした。上野さんは「年は離れているがいい仲間だった。もう話もできないと思うと寂しい」と肩を落とした。【浅野翔太郎、清水晃平、高橋広之】

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