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匿名の刃~SNS暴力考

理不尽な言葉で「思考停止」 死に至る被害者の心理とは 香山リカさん分析

香山リカさん=本人提供

 SNS上の誹謗(ひぼう)中傷では、投稿された攻撃的な言葉が被害者を追い詰め、最悪の場合、死を選んでしまうケースもある。自身もツイッターで中傷を受け、裁判で闘った過去がある精神科医の香山リカさんは「理不尽で強い言葉であるほど、顔を平手打ちされるようなショックを受け、思考停止してしまう」と話す。経験をもとに、被害者、加害者双方の心理を分析してもらった。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

 ――SNSで誹謗中傷を受けると、心理的に追い込まれるのはなぜでしょうか。

 ◆まずは距離の近さがあると思います。特に若い人はスマートフォンでSNSを利用する人が多く、アプリケーションを開けば投稿がすぐ見られるので、自分の手元にダイレクトに届く感覚があり、恐怖心が高まります。手紙であればまずは郵便受けに届くなど目にするまでの過程にクッションがあるので、負担は違うでしょう。

 また、手紙などで一人にひどいことを言われた場合、「この人がちょっと変なだけ」と自分の中で処理できますが、ツイッターであれば一つの投稿がリツイートで拡散したり、「いいね」で同意を得たりし、その数も可視化されます。そうすると、自分を非難するのは一人でなく、これだけたくさんの人が同じ気持ちなんだと思ってしまう。自分対多数、という構図と錯覚し、より強い恐怖を感じるのです。

 ――その状況で「死ね」「消えろ」など強い言葉を見ると、ダメージは大きくなるのでしょうか。

 ◆そうですね。海外のある学者が、ヘイトスピーチについて「顔面に平手打ちをくらうようなもの」とし、「被害は瞬時に生じ、なぜそうした行為がなされたのかということに思いを巡らす余裕も、それに対抗しうる表現を相手に返す余裕も与えられない」と説明しています。誹謗中傷も同じで、自分の存在を否定するようなひどい言葉を浴びせられると、人はショックのあまり頭が真っ白になって思考停止し、沈黙してしまう。そして不思議なことですが、その言葉を見ているうちに、相手の言っていることに理があるのではないか、という心理状態に陥るのです。いわれのない、理不尽な強い言葉ほどショックが大きいので、そういう傾向は強まります。

 ――例えば「死ね」と言われると、「自分には生きている価値がない」と思うということですか。

 ◆はい。冷静に受け止めれば、「そんなこと言われる必要はない」と言い返し、距離を置くなどの対応を取れるのですが、理不尽で不意打ちであるほど、そう言われてみればそうかもしれない、とか、相手の言っていることは正しいのかもしれない、と思ってしまう。背景には…

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残り2631文字(全文3708文字)

牧野宏美

2001年入社。広島支局、大阪社会部、東京社会部などを経て19年5月から統合デジタル取材センター。広島では平和報道、社会部では経済事件や裁判などを担当した。障害者や貧困の問題にも関心がある。温泉とミニシアター系の映画が好き。

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