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リニア開業延期見通し 計画ありきの姿勢脱皮を

 リニア中央新幹線の品川―名古屋間の開業が延期される見通しとなった。JR東海は2027年を目指すが、静岡県内のトンネル工事を巡り、県との協議が行き詰まっている。

 静岡県は、工事の影響で大井川の水量が減り、流域62万人の生活用水や事業者の利水に影響が及ぶと指摘している。

 水量を維持するとのJR東海の説明に対し、「根拠となる解析モデルやデータの精度が不明確で、説明もわかりにくい」などと反発し、着工に同意していない。

 JR東海は、データを出しさえすれば反論を抑えられる、と考えていたのではないか。静岡県から突きつけられた環境調査の課題を「あまりに高い要求だ」と受け止め、反目しあって議論がかみあわない状態が続いている。

 静岡県は、駅もできないのにリスクだけ引き受けているという不満を抱えているのだろう。JR東海には、地域のいらだちや不安に誠実に向き合おうとする意識が足らなかった。

 リニアは、大阪までの総工費9兆円のうち、国が財政投融資の低利資金3兆円で支援する「国家プロジェクト」だ。だからといって、一方的に計画を押しつける姿勢では、理解を得られまい。

 事態を打開しようと、国土交通省は専門家による有識者会議を発足させ、双方の主張を検証することにした。中立的な立場で議論を進めることが前提だ。

 しかし、国交省の藤田耕三事務次官は、静岡県の川勝平太知事と会い、環境への影響が軽微な範囲で工事を認めるよう提案した。

 有識者会議の議論が集約された段階ではない。開業スケジュールありきの拙速な対応ではないだろうか。

 リニアを巡る環境には変化が生じている。新型コロナウイルスの感染拡大やデジタル化を背景に、遠距離移動は減る可能性がある。外国人観光客がどこまで回復するかも見通せない。

 このうえ開業が遅れれば建設費は膨らみ、JR東海の財務を圧迫する。運賃に転嫁すれば、需要はさらに減るだろう。

 こうしたリスクの再点検が必要だ。計画ありきで走り続けることはできない。

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