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今よみがえる森鴎外

2022年に没後100年を迎える森鴎外。毎回筆者とテーマを変えて、作品に現代の光を当て読み解きます。

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今よみがえる森鴎外

/16 食べ物の好み 記憶に残るこだわりの味=作家・嵐山光三郎

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 <文化の森 Bunka no mori>

 鷗外がドイツ留学で学んだのは衛生学である。細菌学者コッホについて衛生試験所で研究に従事した。そのため、なまものに対して極度の警戒心を持ち、当然ながらなま水は飲まず、果物もなまで食べることができない。果物は煮て食べた。梅、杏子(あんず)、水蜜桃、天津(てんしん)桃は煮て砂糖をかけて食べた。極端な潔癖症になり、牛乳が嫌いだった。母親の峰子が砂糖や葡萄(ぶどう)酒(しゅ)を加えて飲まそうとしたが、手つかずのまま残されていた。

 隠元豆、ソラ豆を好んだ。ソラ豆を食べるときは机の横に、いつも濡(ぬ)れた布巾を置いた。指をふくためである。子どもたちを連れて東京・上野や銀座の西洋レストランへ出かけたが「マヨネーズのようなドロドロしたものは食うな」と言うのが常だった。店が出したドロリとしたものは衛生学上、許されざる料理だった。

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