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書の美 詩書巻 光悦の優れたバランス=島谷弘幸

 この1巻は、白・薄桃・緑青などの淡い彩色でさまざまな木蓮(もくれん)の様子を下絵として描いた絹本に、初唐の詩人王勃(おうぼつ)が滕王閣(とうおうかく)を詠じた七言古詩を筆頭に『唐詩選』から抄出した12篇(へん)を揮毫(きごう)したものである。図版は巻末にあたり、盛唐の詩人高適(こうせき)の賦と「徳友斎光悦書」の署名と花押が付された部分である。これに続けて、本阿弥光悦(1558~1637年)の孫である日允上人による「祖父太虚庵光悦」の真跡に間違いないと極めた奥書が加えられている。

 光悦は近世初期を代表する能書として知られるが、陶芸や漆工芸にも堪能で、当時のアートディレクター的な存在でもあった。日本の伝統的な書法に立脚しながらも、中国・南宋時代の張即之の書法の影響を受けた、個性的で切れ味鋭い筆致で「劉評事が朔方の判官に充てらるるを送りて征馬嘶(せいばせい)を賦し得たり」の題に加えて「征馬向辺州、蕭々/嘶未休、思深常/帯別、声断/為兼秋、岐路風/将遠、関山月/共愁、贈君従/此…

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