メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

吹き抜け構造「対策必要」6割超 でも実態把握わずか 全国52消防アンケ

[PR]

 アニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)で36人が死亡、33人が重軽傷を負った放火殺人事件の発生から18日で1年となるのを前に、毎日新聞は全国52の消防機関にアンケートを実施した。火災拡大の原因とされるらせん階段のような「吹き抜け構造」がある建物について、法規制がない場合でも何らかの対策が必要との回答が6割を超えた一方、同様の構造を持つ建物の有無などを把握する調査をしたのは京都など5機関にとどまった。専門家は「建物の規制の是非など、国として何らかの方向性を示すべきだ」と指摘する。

 京アニ事件では青葉真司容疑者(42)=殺人容疑などで逮捕、鑑定留置中=がスタジオ1階のらせん階段付近にガソリンをまいて放火したとされる。吹き抜け構造のため一気に煙と炎が3階まで上がり、避難も困難になったことが、死傷者が多くなった原因と分析されている。建築基準法は、市街地といった「防火地域」内の建物など一定の基準を満たす場合、吹き抜け構造を防火戸などで区切る「竪穴(たてあな)区画」の設置を求めている。だが、被害を受けたスタジオは対象外で設置されていなかった。

 アンケートは6月、道府県庁所在地の46市とそれ以外の5政令市、東京23区を管轄する全国52の消防機関に実施し、全て回答を得た。札幌や横浜、大阪、北九州など32機関が「法律などで特別の規制がない場合でもハードやソフト面で特別な対策が必要だ」とした。

 具体策を尋ねると、「建築基準法の強化が望ましい」(福岡)、「吹き抜け構造を有する建物の煙の流動性や、防火区画の設置基準などの検証が必要」(神戸)など、法令改正を含め国の対応を求める意見があった。

 一方、吹き抜け構造の建物の把握調査をしたのは、千葉▽静岡▽京都▽鳥取県東部(鳥取市を管轄)▽福岡――の5機関。検討中も北九州だけで、9割に当たる47機関は検討もしていなかった。実施しない理由は「消防法令上の不備がない」(東京)など、16機関が京アニのスタジオに法令違反がなかったことを挙げた。「人員を割く余力がない」(長野)、「らせん階段はデータ項目になく対象抽出が不可能」(奈良)などで、対応しきれないとした機関もあった。

 調査した5機関では、3階建て以上など第1スタジオと類似の建物を対象に特別に実施したのは千葉(32件)、京都(280件)、鳥取(4件)。千葉と鳥取では吹き抜け構造のある建物はゼロだった。京都は約180件に竪穴区画か、代替策となる屋外階段を設けていたが、約100件はいずれも備えていなかった。静岡(約3500件)と福岡(5818件)は京アニ事件後の通常の立ち入り検査で吹き抜け構造も確認したが、いずれもらせん階段などは確認されず、実態調査は緒に就いたばかりだ。

ガソリン販売時の身元確認や記録保管の実施6割弱

 また、青葉容疑者がガソリンスタンド(GS)に携行缶を持ち込んでガソリンを購入していたことから、総務省消防庁は2月、販売時に身元や使用目的の確認と記録を義務付けるよう省令を改正したが、アンケートではGSが身元確認や記録保管をしているかの実態調査を全体の6割弱の29機関が実施していた。他の23機関は「年間計画に基づいた立ち入り検査時に確認する」(水戸)などとした。

 「GSが事件を重く受け止め、記録保管などを誠実に実施している印象を受ける」(福井)との評価がある一方、「販売側の負担になっているのは事実で、それを理由にガソリンを容器で購入できるGSが減少することを危惧する」(千葉)との声もあった。【小田中大、福富智】

国が方向性を示すべき

 永田尚三・関西大教授(消防行政)の話 多くの消防が吹き抜け構造の建物の調査をしないのは、国の方針が出ておらず動きづらいからだろう。放火まで想定すると建物を要塞(ようさい)にしなければならないし、小規模な事業所に屋外階段の設置などを義務付けることも経済的に難しく、現実的ではない。ただ、事業者が自分たちの勤務場所は「京アニと同じ被害が生じる恐れがある」と認識したり、各消防が対策を練ったりする上で現状を把握する意味はある。あれだけ多くの被害者を出した事件で、6割の消防が対策を必要と感じている以上、建物の規制の是非などを含め、国として何らかの方向性を示すべきだ。

京都アニメーション放火殺人事件

 2019年7月18日午前10時半ごろ、アニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、中にいた社員70人中36人が死亡、33人が重軽傷を負った。放火殺人事件での死傷者数としては平成以降最悪。京都府警は現場付近で青葉真司容疑者(42)=さいたま市見沼区=の身柄を確保したが、全身の9割に重いやけどを負っていたため病院に搬送。皮膚の移植手術を受けて回復したとして20年5月27日、36人の殺人と34人の殺人未遂などの疑いで逮捕・送検した。京都地検は事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を6月9日から実施している。期間は9月10日までの予定。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 「ヒステリックブルー」元ギタリスト、強制わいせつ致傷容疑で逮捕 埼玉県警

  2. 「わー、よかった」明るい娘に“嫌な予感” 「キッズライン」性被害 母が証言

  3. 山口達也容疑者「友人宅へ行く途中だった」 酒気帯び運転容疑 警官運転の車に追突

  4. 駆け込んだ交番内でわいせつ被害 当時、警官不在 男は逃走 東京・葛飾

  5. 「もうええわ」ふるさと納税返礼品業者の叫び 指定取り消しの高知・奈半利町

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです