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第103回全国高校野球選手権

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#最後の1年

室戸岬の漁師町から旋風再び たった1人の3年生球児が6校大連合で夏に挑む

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素振りを繰り返し、額に汗を浮かべる室戸高主将の山川将輝=高知県室戸市で2020年7月3日午後6時13分、倉沢仁志撮影
素振りを繰り返し、額に汗を浮かべる室戸高主将の山川将輝=高知県室戸市で2020年7月3日午後6時13分、倉沢仁志撮影

 太平洋にせり出した室戸岬の漁師町、人口1万2000人の高知県室戸市に県立室戸高はある。13年前の春、甲子園に旋風を巻き起こした野球部は過疎化の波にのまれ、影を潜めた。ただ創部71年の伝統の灯はたった1人の3年生の胸にしっかりとともっている。新型コロナウイルスにもめげず、東西200キロ超をまたぐ6校での「巨大連合チーム」で勝負に出る。

 7月初旬の夕刻。雨が屋根を打つ校内の柔道場に部員たちはいた。グラウンドがぬかるんでも練習は休まない。無心で素振りを繰り返し、玉の汗を浮かべていたのは室戸高野球部唯一の3年生で主将の山川将輝(まさき、18歳)だ。往時は部員60人を誇ったが、現在は2年生2人、1年生1人を含めて4人。だがユニホームの柄や色は違えど、離れたところにもチームメートはいる。「野球ができるのがうれしい」。連合チームを組む遠くの友を思い浮かべ、山川のバットから「ブンッ」と風を切る音が鳴る。「東と西の果てで、連合チームを組む時代になってしまうなんてね」。傍らで見守る監督の柴原享一(きょういち)さん(58)が遠くに目をやった。

沸くアルプス席、地域で紡いだ夢物語

 「室戸旋風」は地域一帯で紡いだ夢の物語だった。戦後の高度経済成長期、市の人口は3万人を超えた。だが主力産業の遠洋マグロ漁業が衰退し、過疎化に歯止めがかからなくなっていた1998年、誰が言い始めたか、「…

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