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ステイホームできぬ少女たち 緊急事態宣言下で孤立、さらに深め

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街頭で家に帰れずさまよう少女を探す橘ジュンさん。新型コロナ下では、繁華街に出ることもままならない=東京都内で2017年11月、後藤由耶撮影
街頭で家に帰れずさまよう少女を探す橘ジュンさん。新型コロナ下では、繁華街に出ることもままならない=東京都内で2017年11月、後藤由耶撮影

 新型コロナウイルスによる外出自粛が要請され、親から虐待を受けるなど、家庭に居場所がない少女が孤立を深めている。若者を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」の橘ジュン代表(49)は、自宅で家族と過ごす時間が増え、問題が深刻化していると指摘する。

移動に制限、相談にも苦慮 NPO「BONDプロジェクト」橘ジュン代表

 <家がきついし死にたい>。BONDが相談を受け付ける無料通信アプリ「LINE(ライン)」の画面には日々、家族との暮らしに限界を感じる若者からの訴えが届く。相談者は10~20代の女性が中心。LINEを使えば、「無言」のままスマートフォンにSOSを打ち込める。外出自粛で常に家族がそばにいても、電話越しに悩みを話さなくて済むよう気遣っている。

 ステイホーム。新型コロナの感染防御のため、日本中が実践したこの合言葉に、橘さんは違和感を覚えた。現実に、家にいたくても、いられない若者はたくさんいる。「この合言葉の裏で、一人で苦しむ人もいることを忘れないでほしい。『家に帰れなくてもいいんだよ。守られる別の居場所を作ってあげる』。コロナ下で、そんなメッセージがあったでしょうか」

 <親が在宅勤務になり、ずっと家で過ごしているのがしんどい>。未成年者からはこうした嘆きが寄せられる。学校が休校になり、逃げ場もない。<彼氏がテレワークでイライラして、殴られることが増えた>。ドメスティックバイオレンス(DV)が激化したと助けを求める女性も多い。4月に緊急事態宣言が出て以降、BONDには月に約1600件の相談が届いた。

 BONDという名前は、「必要な支援と結びつける」という意味で付けられた。虐待やDV相談では、福祉事務所や児童相談所、女性相談センターにつなぐ。だが、自粛期間中は施設が実質的に機能していないことも多かった。<コロナのせいで児童相談所の面会回数を減らされた>。そんな悩みを抱えた10代もいた。

 橘さんはこれまで、危険なシグナルを察知すると「会って話そう」と声を掛けてきた。相談者に会うため、北海道から沖縄まで出向く。だが、緊急事態宣言の期間中は身動きが取れなかった。直接会う代わりに、テレビ会議システム「Zoom」での面談も取り入れた。

 それでも、緊急性を感じる少女の元に駆けつけたこともある。面会ではまず、マスク着用やアルコール消毒を徹底して「私は36度5分だよ。あなたは何度?」と体温を確かめる。悩みを聞き始めると、「パパ活」などで知らない男性と会ってきたばかりという少女も少なくなかった。「パパ活」とは、デートなどをする見返りに金品を受け取ること。お金が必要な背景には、勤め先が営業自粛して稼ぎ口をなくし…

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