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政府は、個人の旅行代金を助成する「Go Toトラベル」事業を見直すことを決めた。
全国一斉に実施するのではなく、新型コロナウイルスの感染者が増加している東京都を発着する旅行は対象外にするという。
東京ではきのう、過去最多となる286人の感染者が確認された。このまま実施すれば、地方へ広がりかねないとの懸念の声が出ている。他に選択肢はないだろう。
そもそも、政府の対応に問題がある。観光客を受け入れる側の地方や、感染症対策の専門家の意見を十分に聞かないまま、8月上旬としていた事業開始時期を前倒しすると、唐突に発表した。自治体が反発するのは当然だ。
事業自体は22日から始める見通しだが、直前になって制度が見直されたことで、予約手続きなどに多大な影響が生じそうだ。混乱を招いた政府の責任は重い。
感染防止と経済回復を両立させる政策は重要だ。しかし、感染の収束が遅れれば、経済の回復はさらに遠のく。感染の状況を丹念に分析し、得られた知見を政策に反映させていくことが欠かせない。
観光客を受け入れる地域の住民感情も考えたい。特に高齢者は、都市部から感染が広がることへの不安が強いのではないだろうか。青森県むつ市の宮下宗一郎市長は「(事業で感染が拡大すれば)人災となる」と警告している。
政府は経済回復を急ぐあまり、きめ細かい目配りを欠いていた。
気がかりなのは、首都圏や近畿圏だけでなく、地方でも再び感染者が増えていることだ。助成対象から東京を外すだけで十分だろうか。さらに状況が悪化する事態も想定しておく必要がある。
観光への支援はまず近隣県などから始め、段階的に広げていくといった対策が必要だ。拙速な対応で感染拡大を招けば、かえって観光業に悪影響を及ぼす。
感染者が増えている東京都と国の不協和音も目立った。
東京都の小池百合子知事が都外への移動を自粛するよう求める一方で、国が全国一律で観光を後押しするちぐはぐな対応に、国民は戸惑ったのではないか。
感染拡大防止と経済回復の両立に向け、政府は適切な道筋を示さなければならない。