政治家の涙に共感できないのはなぜだろう

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口利き疑惑を受けて記者会見で辞任を表明する甘利明経済再生担当相(当時)=東京都千代田区で2016年1月28日午後5時38分、喜屋武真之介撮影
口利き疑惑を受けて記者会見で辞任を表明する甘利明経済再生担当相(当時)=東京都千代田区で2016年1月28日午後5時38分、喜屋武真之介撮影

 正直言って、ほとんど共感できない。政治家が謝罪記者会見などで流す涙のことだ。河野太郎防衛相(57)は6月下旬、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入断念を表明した際、急に目元に涙を浮かべた。また最近では、前法相で衆院議員の河井克行被告(57)と妻で参院議員の案里被告(46)の公職選挙法違反事件に関し、地元広島県内の市議などが「現金を受け取った」と認め、涙ぐんでいた。泣きたいのは1票を投じた有権者のほうだろう。そもそもなぜ政治家はこんなに泣くのだろうか。泣けば同情されると思っているのか? はたまた演技なのか? 真剣に考えた。【生野由佳/統合デジタル取材センター】

防衛相の涙に批判集まる

 6月25日。自民党の会合に出席した河野防衛相は、秋田県と山口県で進めていた「イージス・アショア」の配備計画断念の経過について説明していた。一通りの報告を終えたころ、こう切り出して涙ぐんだ。

 「今日の場にいらっしゃいません、中泉前参院議員には、本当にとりかえしのつかない、申し訳ない。あの、思っております。私も電話申し上げておわびを致しましたが、中泉さん、これからしっかり、私も個人的にもバックアップしてまいりたいと思っております。今ここで申し上げても取り返しがつきませんが、心よりおわびとご報告とさせていただきたいと思います」

 「中泉前参院議員」とは、昨夏の参院選で秋田選挙区で立候補し、敗れた中泉松司氏(41)のこと。イージス・アショアが争点となり、反対を訴えた野党統一候補の寺田静氏(45)に敗れ、議席を失った。河野防衛相のメガネは涙とマスクで曇り、そのまま頭を深々と下げた。秋田への配備を巡っては、住民説明会で防衛省職員が居眠りをしたり、調査したデータに誤りが見つかったりして、有権者の反発が拡大。中泉氏の落選の一因とされていた。

 河野氏の涙は世の人々の共感を呼んだのだろうか。ツイッターなどをのぞいてみると、「(断念により)無駄にした税金は我々国民のお金。どっちむいて泣いてるの」▽「国内外に問題山積しているときに、芝居している場合か」――などと、厳しい反応が大半だった。

地方でも謝罪会見で次々と涙が

 ちょうど同じころ。前法相の河井克行衆院議員、妻の案里参院議員が6月、東京地検に公職選挙法違反(買収)で逮捕され、その後起訴された。地元の広島県では、克行前法相からの現金受領を認めた地元のベテラン議員らの目から涙が流れていた。

 広島市議会の石橋竜史市議(48)は6月25日に記者会見。前年の統一地方選で3回目の当選を果たした後、克行前法相から30万円の入った封筒を渡されたと明らかにした。「拒むことができなかった」とむせび泣いた。

 北広島町議会の宮本裕之議長(61)も6月29日、前法相からの20万円の授受を認めて議長職を辞職する意向を表明(その後議員辞職も表明)。「受け取りを拒否できなかった」と涙を見せた。

 ツイッターでの反応を見ると、やはり批判の声が多数だった。だが石橋市議が(前法相から)「2人だけの秘密と言われた」「政権中枢に近い議員で、簡単にあらがえなかった」などと詳細に訴えたところ、一部で「政界の闇を見た」「(前法相の)パワハラにも思えてきた」と同情っぽい意見もみられた。

 だが涙については「誰に向かって泣いているのか」「自業自得の行為でなぜ泣く」「議員辞職もしていないのに」と批判的な声ばかりだった。

 そもそも公職選挙法では、買収目的の現金を受け取った側も同法違反(被買収)に問われる。法定刑は3年以下の懲役か禁錮または50万円以下の罰金。罰金刑以上が確定すれば、公民権停止となり失職する。法に触れる行為をしていながら涙とは、共感が得られないのはむべなるかな、といったところだろう。

忘れられない涙とは

 昔の政治家もよく泣いたのだろうか。

 「昔の政治家は今みたいに人前では泣きはせんよ。ぐっと我慢して、裏で静かに涙したもんだ。情けない」。少々ご立腹なのは、元参院議員の平野貞夫さん(84)だ。衆院事務局職員の経験もあり、…

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