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リニア開業延期の恐れ「静岡悪者論」に県が反論 「着工遅れの責任はJRに」

川勝平太知事は定例記者会見でも「JR東海の姿勢によって対話が進まなかったことに着工の遅れの原因がある」と「静岡悪者論」に反論した=静岡県庁で2020年7月14日午後2時34分、山田英之撮影

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 「静岡県の了解を得られておらず、2027年中の開業は難しい」――。JR東海の金子慎社長は15日の記者会見で、リニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区の準備工事に言及した。金子社長はこれまでも品川―名古屋間の開業延期の恐れと、未着工の静岡工区の進捗(しんちょく)を結びつけて発言してきた。全国的には「静岡のせいで開業が遅れる」との「静岡悪者論」が幅を利かせている。しかし、県は「着工遅れの責任はJRにある」と真っ向から反論している。【山田英之】

 「JR東海は県の専門部会委員の質問に十分に対応せず、計算の根拠である数値も示さず、分かりやすい資料を求めても応じないなど、真摯(しんし)とは言えず、対話が進まなかった」。川勝平太知事は6月の県議会で、協議の難航によって静岡工区に着工できない責任はJR側にあると指摘した。

 トンネル掘削前の準備工事について、金子社長は5月末の記者会見で「6月中に(知事の)了解を得られないと、27年開業は難しい」と言及。リニアの駅ができる沿線自治体をはじめ、県外を中心に「静岡県が工事を認めないことで、リニア開業は遅れる」との世論が形成されつつあるように見える。

 これに対して、県はトンネル工事に伴う水や自然環境への悪影響を懸念する大井川流域住民の思いに、JRがきちんと向き合ってこなかったことで、着工に向けた協議が進まなかったと主張する。

 県が特に問題視するのは、掘削工事でトンネル内に湧き出る水の大井川への「全量回復」をJRが表明するまで4年半もかかったこと。JRは13年、「南アルプストンネル工事で、大井川の流量は毎秒2トン減少する(何も対策をしない場合)」と予測。このため県は14年3月、環境影響評価準備書に関する知事意見で、トンネル湧水(ゆうすい)全量を戻すことを要求した。

 ところが、JRが「原則として県内で湧き出るトンネル湧水全量を大井川に戻す」と表明したのは18年10月になってから。県は「この間、工事に伴う環境への影響回避に向けた具体的な措置についてJRと対話を進められなかった」と苦言を呈する。

 県は18年11月に大学教授らによる「地質構造・水資源」「生物多様性」の二つの専門部会を設けて、JRとの協議を始めた。しかし、専門部会でのJRの姿勢についても県は「分かりやすい説明をせず、十分なデータの提供をしてこなかった」と言う。昨年10月には水問題を巡って協議が紛糾。国土交通省が調整役として乗り出し、有識者会議を設ける一因になった。

 県によると、南アルプスを源流とする大井川の水は、流域約62万人の生活用水▽水田や茶園を中心に約1万2000ヘクタールの農地の農業用水▽地下水の利用を含めた約450事業所を支える工業用水▽水系全体の年間総発電量は一般家庭約80万世帯分に相当する発電用水――に活用されている。県は「リニア工事で、大井川の水と南アルプスの自然環境に悪影響が生じることは決して許されない」と主張する。

 27年開業に間に合わせるため、金子社長や藤田耕三・国交省事務次官は6、7月に相次いで県庁を訪れ、川勝知事への直談判で一気に事態を打開しようとした。だが、県は水問題や生態系への影響回避を含めた47項目を専門部会で検証したうえでなければ、自然環境保全協定をJRと結ばない方針だ。協定締結はトンネル本体工事着工の前提条件で、急展開は望めそうもない。

 県くらし環境部の織部康宏理事は県議会の常任委員会で「(大井川の流量減少予測は)かなりショッキングな数字だった。毎秒2トンは約60万人分の生活用水。JRはなかなか(湧水を)全量戻すと表明せず、18年に表明してそこからやっと対話が始まった。(湧水が)県外流出することも昨年判明して、対話が進まなかった」と県の見解を述べている。

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