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東京へ ともに歩む

毎日新聞

延期になった東京オリンピックや現在の練習状況などについて語る渡辺一平=埼玉県所沢市で2020年7月16日、佐々木順一撮影

アスリート交差点2020

記憶に残るスイマーへ 2カ月ぶりのプール 泳ぐ喜び感じながら=競泳・渡辺一平

 新型コロナウイルスの感染防止のため約2カ月ぶりの練習は、コーチも誰もおらずプールで1人きりでした。

 5月下旬から所属先のトヨタ自動車に環境を整えてもらい、トヨタスポーツセンター(愛知県豊田市)で再スタートを切りました。プールに入る前は気持ちが高ぶり、わくわくする思いが止まりませんでした。泳ぎ始めた時の喜びはすごいものがありました。しばらくはコーチから練習メニューを送ってもらい、自主練習に取り組む日々でした。

 2カ月間もプールから離れたのは競技を始めてから初めての経験で、自分の体ではないような感じでした。腕をかいても、水がつかめない。まるで自分の手ではないように思えました。水泳は特殊なスポーツです。水に入らないと水泳の動きができないことを改めて実感しました。

練習を再開した渡辺一平=埼玉県所沢市で2020年7月16日、佐々木順一撮影

 体力が落ちていることもはっきりと分かりました。昨年の世界選手権後、1カ月間プールに入らなかった時も体力や筋力を取り戻すのに3、4カ月はかかりました。泳がなかった期間が2倍になったことで元に戻すには半年ぐらいはかかると考えています。

 振り返ると、3月に東京オリンピックの延期、直後には五輪代表選考を兼ねた日本選手権の中止が決まりました。事前の米国アリゾナ州フラッグスタッフでの高地トレーニングは順調に追い込め、絶好調でした。メイン種目の男子200メートル平泳ぎでは自己記録(2分6秒67)、さらには世界記録(2分6秒12)の更新も狙える状態と思っていましたが、大会がなくなってしばらくは泳ぐ意味を見いだせなくなりました。

 外出自粛の間は、自宅で韓国ドラマを見てリラックスしたり、母校の早稲田大水泳部のリモートでのトレーニングに参加したりして過ごしながら、自分を見つめ直し、考える良い時間となりました。

 ニュース番組ではスポーツの話題があまりなかったなか、6月にプロ野球が無観客ながらも開幕したことは、一人のアスリートとしてうれしく思いました。前向きな気持ちを伝えられる力がスポーツにはあると感じ、水泳でも示すことができればと思います。

 今年、何事もなく五輪が開催されていれば、結果は出せたかもしれません。それでも、より良い結果を追い求めるためには、この1年は大きいとポジティブに考えています。スタートやターンの技術はまだまだ磨ける部分があります。

 この状況でモチベーションを高く保つのは難しいですが、6月中旬からは早大で後輩たちと泳ぎ始め、泳げる喜びを感じながらたくさんの刺激をもらっています。200メートル平泳ぎで人類初の2分5秒台、そして「ぶっちぎりで金メダル」。2度目の五輪1年前を迎えるにあたって、目標を変えることなく強化を進めていこうと考えています。(あすはバドミントン・奥原希望です)

渡辺一平(わたなべ・いっぺい)

 大分県出身。佐伯鶴城高3年時の2014年ユース五輪男子200メートル平泳ぎで金メダル。16年リオデジャネイロ五輪で6位入賞。17年、19年世界選手権銅メダル。トヨタ自動車所属。23歳。