制裁金60億円 ドイツのSNS対策法を日本がまねしない方がいい理由
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差別的な表現などに厳しく目を光らせるドイツ政府は2018年1月、SNS(ネット交流サービス)事業者に違法な投稿の削除などを義務づける「SNS対策法」の運用を始めた。ドイツでは、過去のナチスの失敗からヘイトスピーチの取り締まりを強める一方で、表現の自由とのバランスを巡って議論が続く。ドイツの法規制に詳しい、慶応大メディア・コミュニケーション研究所の鈴木秀美教授(メディア法)は「ドイツの法律の都合のいい面だけを見て日本にも……などとは考えないでほしい」と話す。その理由は。【鵜塚健/統合デジタル取材センター】
ナチスの経験、絶対繰り返さないよう……。
――SNS事業者に巨額の制裁金(過料)を科すことで注目されたSNS対策法。規制の中身はどんなものなのでしょうか。
◆正確な名称は「SNSでの法執行を改善するための法律」で、SNS事業者に対し、違法な投稿の削除を義務づける法律です。
狙いは主にヘイトスピーチです。日本ではヘイトスピーチは言ってはいけないとされますが、罰則はありません。一方、ドイツの刑法ではヘイトスピーチすなわち、特定集団に向けて憎悪をあおり、公共の平穏を傷つけるような表現は、民衆扇動罪に当たるとして処罰されます。ドイツはナチスの苦い経験から「絶対にあのようなことは繰り返してはいけない」という強い反省があります。「ホロコースト(大量虐殺)はなかった」とする「アウシュビッツのうそ」や、ナチスやヒトラーへの賛美、礼賛も罪とされています。
にもかかわらず、ネット上にはヘイトスピーチ的な投稿がたくさんあります。当初、事業者に自主的な対策を任せていましたが、効果がないため、政府がSNS事業者に対する法規制に乗り出しました。ヘイトスピーチ以外にも、誹謗(ひぼう)中傷や侮辱、脅迫、児童ポルノに関する投稿など、刑法で禁止された表現が削除対象とされています。
フェイスブックやユーチューブ、ツイッターなど200万人以上のユーザーを持つ事業者に対し、悪質な投稿に関する苦情窓口を設けることを義務づけました。さらに、苦情を受け付けたら違法かどうかを判定し、明らかに違法なものは24時間以内に削除やアクセス制限などの対応を求めています。すぐに判断が難しい場合は、社内外の弁護士らと検討するなどし、1週間以内に判定します。また、受け付けた苦情については半年ごとに報告書の公表を義務づけています。
苦情窓口が機能していない、報告書が出ていないなど、法的義務を果たしていない場合は、ドイツの連邦司法庁が過料(行政罰)を科すとしています。その額は、法人の場合、最大で5000万ユーロ(約60億円)に上ります。
――これまで巨額の過料が科された例はあるのでしょうか。
…
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