失語症の詩

「言葉、仲間と取り戻す」失語症者が作った「群読」詩集 26日までネット上で支援募る

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「失語症者のための群読の詩集」のクラウドファンディングページより 拡大
「失語症者のための群読の詩集」のクラウドファンディングページより

 「わたしは ことばを はなしたい」

 ゆっくりと重なってゆく声は、聞く者の心を揺さぶる。

 東京都東村山市を拠点に活動する失語症の人のサークル「若竹」(古畑裕代表)による「群読(ぐんどく)」で読まれる詩だ。仲間の思いをつづった詩集を多くの人に読んでもらおうと、インターネット上のクラウドファンディング(CF)で支援を募っている。26日まで。【岡本同世】

 本のタイトルは「失語症者のための群読の詩集 言葉を取り戻す」。著者でCFの発起人の渡辺鋼さん(76)は、2009年に脳梗塞(のうこうそく)を発症、失語症と右半身のまひが残った。「言葉の途絶えた世界に突き落とされた」と当時感じた孤独を振り返る。

「失語症者のための群読の詩集 言葉を取り戻す」。それぞれの詩の解説には、家族をはじめ、言語聴覚士や会話パートナーの名前が登場。「若竹」の雰囲気をうかがうことができる 拡大
「失語症者のための群読の詩集 言葉を取り戻す」。それぞれの詩の解説には、家族をはじめ、言語聴覚士や会話パートナーの名前が登場。「若竹」の雰囲気をうかがうことができる

 翌年、若竹に入り、仲間と出会った。少しずつ回復し、14年に群読に取り組みはじめた。既存の台本ではなく「自分たちをうたおう」と、一人一人からていねいに体験を聞き、15編の詩を紡いだ。

一人一人が主役

 40歳で発症し、当時「あー」としか言えなかった谷田由紀子さん(52)は、「人生 終わってないよ」と前を向く「あーちゃん」など2編の詩の主役。「どの詩も私たちの言いたいことそのもの」と話す。今年2月に75歳で亡くなった若竹の前代表、高倉幸次郎さんの葬儀。「やさしすぎて ナニ悪い」と温かくまじめな人柄を伝える「ナニ悪い」の詩がささげられた。

一体感で、前へ

 現在は、新型コロナウイルスの感染拡大で中断しているが、若竹のメンバーは300人規模のイベントやデイケア施設などでの公演を重ねてきた。渡辺さんは「苦しみや喜びを分かりあえる仲間でやると、一体感がすごい。言葉が豊かになり、前に進める」と話し、「家族や医療関係にも読んでほしい。失語症の人は、ぜひ皆で声に出して読んでみて」と呼びかける。

 CFの支援は980円から。金額に応じ1~10冊の詩集(定価800円)が届く。編集から発送は失語症者の働く作業所「パソコン工房ゆずりは」が行う。目標の10万円を突破、20日現在で37万円を超えている。

 サイトでは群読の動画も閲覧でき、失語症の人や家族から「声を出し、伝える姿に感動した」などのコメントが寄せられている。URLは https://camp-fire.jp/projects/view/225875

失語症

 失語症は、脳卒中や事故などで脳が損傷し、思うように話すことや聞いて理解すること、読み書き、計算などコミュニケーションが困難になる障害。全国に約50万人ともいわれる。人によって症状が異なり、重症度や回復ペースにも差がある。

失語症の方へ 記事の要点メモ

  東京の失語症友の会「若竹」渡辺鋼さん

  仲間の思い・体験を「詩」に

  皆で「群読」(音読)

  ↓

 「詩集を出版したい! 多くの人に知ってほしい」

  7月26日までインターネットで資金を募る

  (クラウドファンディング)

  編集、印刷、発送…失語症の人の作業所が担当

  「パソコン工房ゆずりは」

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