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ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

2018年のアジア大会男子100メートル決勝の大舞台で自己ベストタイの10秒00を出して銅メダルを獲得した山県亮太。その後も走りの意識を大きく変え、理想の走りを追い求めている=ジャカルタで2018年8月26日、宮間俊樹撮影

アスリート交差点2020

再現力 理想の走りを求めて 東京五輪が全てではない=陸上・山県亮太

 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出ていた今春、陸上競技をやる意味を問い直し、思い付いた言葉をホワイトボードや紙に記して考えを整理していました。ちょうど、NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の取材を受けていて、最後に必ず聞かれる「プロフェッショナルとは?」という問いに答えるためです。それが新たな気づきにつながりました。

 部屋の入り口付近に大きなホワイトボードを置き、「プロフェッショナルとは?」と大きく書いていました。考えていくと「求道者」「職人」「自ら考える人」というイメージが出てきました。次に考えたことは、求道者はなぜずっと一つのことを考え続けることができるのか。掘り下げると、損得勘定を超えた愛、つまり自分がそれを好きだからでしかないんです。

 なぜ、好きなのかと言えば、100メートルはうそをつかないからです。正しい努力をすれば絶対に結果が出る。けがで走れない時期に「不運」と思うこともありますが、振り返れば自分の体に対する認識の甘さが原因にあります。100メートルの神様が誰かにいじわるをすることはありません。昨年11月に右足首靱帯(じんたい)を断裂しましたが、今年2月から問題なく走れています。

オンライン会議システムで取材に応じる山県亮太

 競技者としての目標は自分が納得する100メートルの走りをずっと追い求めていくこと。終わりはないと思いますが、より深い真理にたどり着くことを目指したい。五輪や試合は過程にあるものと考えています。勝敗も大事ですが、それは自分の目標の本質ではないと気づきました。次の試合で結果を残さないといけないと思いながらする競技は楽しくないです。

 以前は周囲に感動を与える走りをしたいと強く思っていた分、試合の勝敗で気持ちが揺れ動いてしまうことがありました。実際、試合で勝てば、家族や友人、所属企業やファンの皆さんは喜んでくれます。でも、それは世の中の一部です。「もし、多くの人が僕の走りに興味を持たず喜んでくれないのならば、走る意味はないのか?」と自らに問いました。それでも僕は走ります。思考を整理したことで、「周囲に感動してもらう」と外向きだった目的が「走りを追い求める」と自分に向きました。競技に向き合う姿勢に芯が通り、良い意味で肩の力が抜けました。

 今季の試合はまだ一つもありません。調子の波をどこで上げ下げするかの目安がなく、練習にオンオフをつけるのが難しいです。でも、練習に行きたくないとは思いません。試合の有無に関係なく練習は生活のルーティンです。

 東京オリンピックが1年後に控えていますが、自分の中ではそれが全てではありません。どんな状況でも、これからも理想の100メートルの走りを追い求めます。=アスリート交差点は随時掲載

山県亮太(やまがた・りょうた)

 広島市出身。2015年4月、セイコーホールディングス入社。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダル。18年ジャカルタ・アジア大会100メートルは10秒00で銅メダル。28歳。