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有人月面探査への参加 費用対効果にも目配りを

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 米国の有人月面探査計画に、日本が参加することが決まった。

 ギリシャ神話に登場する月の女神にちなむ「アルテミス計画」は、2024年に米女性飛行士を月面に着陸させる。実現すればアポロ計画以来だ。

 20年代後半には日本人飛行士が月に立つ構想もある。月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」を建設し、有人火星探査の拠点とする。

 欧州、カナダも参加を表明しており、国際宇宙ステーション(ISS)計画同様、国際協力体制が整う。日本は有人宇宙活動を米露に依存している。参加により、飛行士の活動域は月まで広がる。

 日本の役割は今後協議される。ISSで培った技術を活用しながら、さらに発展深化させる好機とすべきだ。

 ゲートウェイに大量の物資を運ぶ無人補給船の運用技術はISSで実証済みだ。飛行士の安全な滞在を支える生命維持システムの技術供与も期待される。

 大量の水があるとされる月の極域探査では「はやぶさ」ミッションなどで磨いた技術が生かせる。月を巡っては、中国も独自に探査計画を進めている。

 最大の課題は費用だ。数兆円規模とされる巨大事業の一部を日本が分担することになる。

 財政難で日本の宇宙開発予算は伸び悩んでいる。米国の予算規模は日本の約15倍の5兆円超、欧州も3倍と雲泥の差がある。

 米に押し切られ、限られた予算から過大な支出をする事態は許されない。気象、通信、防災など、暮らしを支える衛星の開発・運用にしわ寄せが来るようでは、国民の理解は得られない。

 宇宙は将来の成長が見込まれる分野だ。民間の活力をうまく取り入れたい。今回、月面を移動する車両の開発にトヨタが出資している。アイデアと挑戦心に富むベンチャーも広く支援し、日本の実力を底上げする起爆剤としたい。

 宇宙飛行士の育成も急務だ。公募は08年が最後で、現役7人の平均年齢は50歳を超えている。

 有人宇宙活動は社会に夢を与え、生まれた知識や技術が暮らしを豊かにする。参加する以上は費用対効果を見極めた上で、日本ならではの貢献を模索してほしい。

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