毎日新聞
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欧州連合(EU)は、新型コロナウイルスで大きな打撃を被った南欧などの経済を再建する復興基金の創設で合意した。
加盟27カ国共同で大規模な債券を初めて発行する。90兆円超を市場から集め、財政力の弱いイタリアやスペインを手厚く支援する。
コロナ禍で自国の利益を優先する動きが世界的に広がる中、EUが結束を示した意義は大きい。
まず、欧州統合の立て直しにつながる可能性がある。
イタリアで流行が始まった時、多くの加盟国は支援するどころか医療物資の輸出さえ制限した。国境封鎖に踏み切る国も相次ぎ、ヒトとモノの自由な移動を掲げた統合の理念は大きく損なわれた。
EUは近年、ギリシャ危機や難民危機への対応で亀裂が生じ、英国の離脱や反EU勢力の台頭を許した。今回合意できなければ、イタリアなどで反EUの機運が一段と強まる恐れがあった。
基金を協議した首脳会議でも、財政に余力がある北欧諸国が南欧支援に難色を示し、紛糾した。決裂しなかったのは、これまで支援に慎重だったドイツが結束重視に転換したことが大きい。
EUはもともと財政政策が各国でばらばらという構造問題を抱える。基金は加盟国間の格差を調整するEUの役割を強化し、財政面でも統合に向かう一歩となる。
コロナ危機の克服に向け、世界に協調を促す契機になることも期待される。
経済対策やワクチン開発では国際社会の協力が欠かせない。にもかかわらず、鍵を握る米中両大国は覇権争いを先鋭化させている。
トランプ米大統領は「中国が感染の発生源」と非難を繰り返し、中国製品を排除する対中包囲網の構築に利用しようとしている。
中国も感染に関する情報開示に後ろ向きで、自国の正当性ばかり強調し、各国への医療物資提供を通じた影響力拡大を図っている。
米中による世界の二極化が進めば、幅広い国際協調は成り立たなくなる。
トランプ政権の発足後、EUは国際協調の必要性を呼びかけてきた。EUが結束を取り戻して安定すれば、日本にもメリットは大きい。政府はEUと連携を強めて、世界の分断を防ぐべきだ。
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