新型出生前診断をあっせんする企業の宣伝文書=東京都千代田区で2020年7月22日、西夏生撮影

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(NIPT)が拡大の一途をたどっている。「命の選別につながる」との懸念をよそに、美容クリニックなどに検査ビジネスとして売り込む企業も暗躍。対抗して、実施施設を絞ってきた関連学会も拡大にかじを切った。【岩崎歩、渡辺諒】

カウンセリングなし「次の検査」

 「初期投資ゼロ! 負担ゼロ!でのクリニック売上向上のご提案」。東京都内の美容クリニックに2019年11月、こんな宣伝文書が届いた。送り主はNIPTをあっせんする都内の企業。妊婦の血液を英国の検査機関に送り、ダウン症などの染色体異常の確率を分析、結果を妊婦に郵送するという。日本産科婦人科学会(日産婦)の指針で認められていない胎児の性別や全染色体異常などもオプションの検査対象だ。妊婦が支払う検査料は1回十数万円が相場で、妊婦を紹介した医院にはこの企業から1回3万円が入る仕組みだ。高齢妊娠が増え、高い費用を払ってでも検査を受けたい妊婦の需要は高まっている。宣伝文書は「集客の手間なし」「今がNIPT検査導入の絶好のタイミング」とうたう。

 厚生労働省が22日に公表した初の実態調査結果によると、国内の少なくとも54施設が日本医学会の認定を受けずNIPTを実施していた。美容系が最も多く、日ごろ妊婦を診察する産婦人科や遺伝診療科は少なかった。厚労省のアンケートに応じた9施設のうち、妊婦全員に「遺伝カウンセリング」をしていると答えたのは4施設しかなかった。

 遺伝カウンセリングは、検査の目的や限界、親になる責任などについて理解してもらう重要な機会だ。不十分なまま検査を受けた場合、妊婦は重い苦悩を背負い込むことがある。

新型出生前診断でおなかの赤ちゃんがダウン症と推定された女性。胎児のまま別れた我が子の記録を持ち歩いている=東京都で2020年7月16日、岩崎歩撮影

 都内の会社員の女性(39)は19年末、「全染色体検査が可能」とうたうクリニックでNIPTを受けた。日本医学会の認定施設を探したが、カウンセリングに時間がかかりそうだったので、認定外を選んだ。

 10日後、「ダウン症 高リスク」と郵送で通知を受け取った。…

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