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持田叙子・評 『星に仄めかされて』=多和田葉子・著

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『星に仄めかされて』
『星に仄めかされて』

 ◆星に仄(ほの)めかされて

 (講談社・1980円)

溶けてつながる和洋の言語と神話

 すてきな題名である。ロマンティックである。「ほ」の音が二つあるのも滑りがいい。しかし待てよ、この題名はなかなかの曲者(くせもの)だ。仄めかす、とはそれとなく言うこと。星が話す? そっと何を言う? 「星」も「仄めかす」もふつうの言葉だけれど、二つを組み合わせたとたんに日常を飛び立つ。ふしぎな詩語の力で私たちを見慣れた世界から引き離す冒険ファンタジーである。

 10章仕立て。雨から始まる。だれかが激しい雨脚を見ている。ムンン。デンマーク「王国病院」の半地下室で、みそっ歯の女の子とお皿を洗いつづける若者だ。白いトンネルからお皿が流れ、箱がレールを走る。可愛いふたりも実は精巧なロボットなのかもしれない。美しくぶきみに幕があく。

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