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英月の極楽シネマ

京都の大行寺で住職を務める英月さんが仏教の次に大好きな映画について紹介する。

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ファヒム パリが見た奇跡(2019年、仏) 右も左も包む道はある

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 難民として父親と共にバングラデシュからフランスに渡った8歳の少年、ファヒム。師や仲間と出会い、さまざまな困難を乗り越えてチェスのフランス王者を目指します。ただこの映画、おとぎ話のような少年の成功物語ではありません。彼の才能を見いだし、伸ばし、支えた人々の物語です。その人たちにも、彼を応援するそれぞれの背景が。ファヒムの師とライバルの師との確執。嫉妬、恨み、嫌悪。そんな負の感情が力となり、そして昇華されていく姿に心が揺さぶられます。

 さて、実話に基づいたこの映画では、言葉や習慣など異文化に順応していくファヒムに対し、そうしたことに消極的な父親の葛藤が描かれます。これは、「コロナ禍」と言われ、「新しい生活様式」を突き付けられている私たちの現状とも重なります。フランスの価値観か、母国の価値観か。生活様式の刷新か、否か。私たちは「右か左か」でいつも苦しみますが、果たしてそんな二項対立の話なのでしょうか。

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