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ウイルス感染症対策の切り札のひとつはワクチンだ。人口の一定の割合がワクチン接種によって十分な免疫を獲得すれば、流行は終息に向かう。
パンデミック(世界的大流行)の終わりが見えない新型コロナウイルスでも、期待は大きい。
世界保健機関(WHO)によると、世界で160以上のワクチン開発が進み、20以上で人間を対象に治験が進められている。
ただし、新興感染症のワクチンの実用化は容易ではない。開発が順調に進んだとしても、有効で安全なワクチンの大量生産が可能になるまでには、かなりの時間がかかる。最初から国民全員に行き渡らせることはむずかしい。
混乱を防ぐために必要なのは、あらかじめ接種の優先順位を決めておくことだ。順番は、それぞれの感染症の特徴に応じて決める必要がある。目的も明確にしておかなくてはならない。
政府は今月、新型コロナウイルス感染症対策分科会でその検討を始めた。すべての国民の健康や命に関わるテーマだけに、透明性のある議論に基づき、科学的にも倫理的にも納得のいく接種体制を構築してほしい。
2009年の新型インフルエンザ流行の際には、重症化や死亡の防止を目的に、医療従事者、基礎疾患のある人、妊婦、幼児などが優先接種の対象となった。
今回の新型コロナでは、「まん延防止」「死亡者・重症者の発生抑制」を目的とし、医療従事者や高齢者、基礎疾患のある人などから接種するとの考え方が提案されている。感染者の多い若年世代をどう位置づけるかは今後の課題だろう。
ワクチンをめぐっては国際的な争奪戦も繰り広げられている。十分な供給量の確保をめざし、日本も戦略を立てておかねばならない。一方で、途上国にも公平に分配されるよう、国際的枠組み作りにも尽力すべきだ。
安全性にも当然、十分な注意が必要だ。米国では豚インフルエンザが流行した1976年、新しいワクチンを多数の人に接種し、副作用が多発した経験がある。
副作用情報にも目配りしつつ、ワクチン接種のための体制整備を早めに進めておきたい。
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